便秘の人の腸がうんこで爆発しない理由を考えた

口から食べ物を食べて、おしりからうんこが出る。
消化管を持つほぼすべての生命体に共通することですよね。

幸いにして現代の我が国では、食べ物は配給制ではありません。
つまり、食べたい時に食べたいものを食べたいだけ食べられる環境にあるということです。

必然的に、うんこの出る量や見た目や頻度も、食べたものの影響なんかで個性的になってきます。

それぞれが良さを持った多様性であればよかったんですが、残念ながらうんこの個性は「コロコロ便秘」「びちゃびちゃ下痢」という多様化の方向性になっている面も否めません。

下痢であれば何らかの病気が直接的に関連付けられることも少なくないですが(過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病など)、
便秘については日常生活への支障が比較的少なめなため、わざわざ治療したり、問題視されることが少ない場合もあります。

それでも個人的には、便秘は地味に苦しいうえに、精神的なデメリットもめっちゃあると思う。おならも臭くなるし。

便秘のメカニズムや解消法についてはいろんな記事がありますが、ふと気になったんです。

何日もうんこ出てない人って、口からはどんどん食べ物が入ってきつづけているのに、なんで腸が爆発せんのやろ?

腸内細菌について学んでからは、こんなふうにも思うようになりました。

「断食しててもうんこが出るのは、腸内細菌とか小腸の壁とかがあるわけやん。何日もうんこ出てない人って、腸が増殖した腸内細菌だらけになって爆発せんのやろか?

便秘で亡くなる人は年に何名かいらっしゃいますが、2週間くらい平気でうんこ出ない人って大勢いますよね。
彼らの腸でなにが起こっているんやろう?

シンバイオシス研究員3人で、ランチタイム後にあーでもないこーでもないとわいわい話した内容をちょっとまとめてみようと思います。

食べる量が少ないからそもそも出なくて当たり前

これは案外見落とされがちなんですが、ダイエット大好き女性とか、高齢者に多い訴えです。

本人は「これは便秘や!」と思い込んで、毎日浣腸とかするんですが、そもそも毎日バナナ便を製造できるくらいの十分な食べ物を摂取しているのかい? って話。

お米を含む水溶性・不溶性両方の食物繊維、うんこを出すときの潤滑油になってくれる適度な脂質の摂取は十分だろうか?

それも十分に摂取しないで、うんこだけゲットしようなんてのは、腸内細菌にとってもいい迷惑です。
自分の体にとっても腸内細菌にとっても必要十分なだけの食べ物をありがたくいただき、ごちそうさまでしたがわりのうんこを出す。

この素晴らしいサイクルは、生命の衰え(つまり老い)とともに穏やかになっていきます。
お年寄りがだんだん食が細くなって、あまり動かなくなり、うんこもちょっとになるというのは自然の摂理なんです。

だから私としては、ダイエットのためにちょっっっとしか食べへん人は「老けたい!」と言っているのと同じやと思うんですよね。

大腸での水分再吸収

ヒトの消化管には、口の中をはじめ小さな穴がたくさん空いています。
ごくごくと水を飲んだ瞬間から、消化管を通じて体に必要な水分がどんどん吸収されていきます。

水分というのは、体内の代謝に使われたり、血液内の電解質バランスを調整したり、細菌の発酵を助けたりしてくれます。
そういう意味で、栄養分そのものと同じか、それ以上に人間にとって必要なものなんです。

一週間くらい食べへんくても死なへんけど、一週間水飲まんかったら死ぬしな。(わたしは先日、一日何も食べなかったら餓死しかけました)

そういうわけで、消化管による物理的なモミモミ活動&消化酵素でドロドロになった栄養素が小腸で吸収されたあと、大腸で再び水分が吸収されます。

かつて大腸にこんなにも腸内細菌が住んでいて、たくさんの活躍をしているなんてみんなが知らなかった時代でも、大腸の水分再吸収機能については知られていました。

うんこの水分含有量は70〜80%程度と言われますが、便秘が続くと大腸がどんどん水分を吸収して、うんこの絶対体積を減らしてくれます。
便秘になるとうんこがコロコロになるのはこれが理由なんですね。

びらびらが広がることで容積アップ

ヒトの大腸を体から取り出して見たことがある人はあまりいないと思いますが(わたしもない)、体がスケルトンになった腸イラストを思い浮かべてみてください。

雲みたいに、もこもこ状になっていません?

これをもうちっと詳しく説明しますと、腸の中というのはびらびらになってるんですよね。
イソギンチャク的な感じ。

これはなんでこうなっているかというと、表面積を広げるため。
腸って、ぜんぶ広げるとテニスコート一面分にもなるんですよ。知ってた?

表面積を広げると、その分たくさんの水分を再吸収できるようになります。
また、細菌たちの住処も増えます。
イソギンチャクに守られるファインディング・ニモみたいな菌たち。めっちゃ和みません?
わたしも仲間に入りたい。

このびらびらがあることで、腸の容積というのは常にある程度の遊びがある状態なんではないかと思うんです。
便秘が続くとだんだんびらびらが広がっていって、浮き輪に空気が入るみたいに容積が広がっていきながら、爆発するまでにはいかないんではないか。

この話してるとき、シンバイオシスメンバーめっちゃ盛り上がりました。
偉大なるエビデンスの前段階には、常に自由な発想と妄想があると信じています。

食物残渣の絶対量が減る

うんこの正体。これをいつも読んでくださっているみなさんならもうご存知でしょう。

  • 食べたもののうち分解しきれなかった食物残渣(食べ物のカス)
  • 一日しか寿命のない小腸の壁
  • 世代交代を終えた腸内細菌

食べ続けているのにうんこが出ない場合、この食物残渣の絶対量が減っているのではとわたしは思うんですよね。
つまり、出せない分は一生懸命体に吸収しなくてはいけなくなるので、消化酵素なり腸内細菌がフル稼働して、吸収できる分は全部分解して吸収しようとする。

簡単に言うと「めっちゃ効率のいい体になる」ってことです。
食べたものを最大限エネルギーとして蓄えられる。太陽光発電もうらやむエネルギー効率の優等生です。

言い換えると「デブりやすい体」ってことでもありますけど。
便秘で太る原因は、水分の再吸収のしすぎによるむくみの他に、こういう原因もあるんちゃうかな。

終止コドンによる細菌増殖のストップ

わたしたちのお腹の中で、細菌は絶えず増殖して世代交代を繰り返しています。
細菌というのは永遠に同じ子が増殖を繰り返しているわけではなく、一定のところで増殖をやめるようにプログラムされています。

これは人間の細胞で言うテロメア1)細胞のがん化・老化にかかわる テロメアとは?とはちょっと違うみたいで、タンパク質の合成にかかわります。
mRNAなんかのヌクレオチド(チミン、アデニン、グアニン、ウラシル)が3個集まったコドンというのがあって(ヤドンの進化系っぽいよな)、
この「コドン」は暗号なわけ。(コードって意味)

ほんでその暗号文を解読するための乱数表みたいなもんが存在して、それを参考にして翻訳していくと(これがmRNAの役割)、
あらふしぎ、特定のアミノ酸ができるってわけ。

そのアミノ酸が結びついてタンパク質が合成されて、我々の体ができていくわけやけど、
ずーーっと合成されつづけたらデブになるやん?
だから「もう合成終わり〜」っていう合図がコドンにはあって、これを終止コドンと呼ぶと。

ヒトの増殖は受精卵やらなんやらがいろいろ複雑に絡み合っているから、この終止コドンの働きはあくまで細胞レベルの新陳代謝の文脈でしか語られないことが多いけど、
細菌に関してはダイレクトに増殖と結びつきます。

宿主の健康も自分の健康もどっちも気にせなあかん細菌にとっては、どこまでも増えすぎるということは宿主の腸を爆発させてしまうことになって、自分の住処を失ってしまうことになります。

それを彼らはわかっているので、終止コドンを予め適度なところにセットしておいて、一定のところで増殖を止める合図を鳴らす仕組みを取っていると考えるのが妥当なんですよね。

そう考えると、先進国の人類たちが、経済的事情なり自己実現なり不妊なりであんまり子供を産まなくなってきてるのって、
感染症とかで死ぬ確率が減って増えすぎた人類の増殖に歯止めをかけるため、
人類なりの終止コドンが発動してるのかもしれへんよなあ。

なんかそういうこと考えると、人の力を超えた大きな自然の摂理的なやつを感じて、しみじみするよな。(残暑の感傷)

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。

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