腸は第二の脳ではなく「第一の脳」と言っていいかもしれない

たまに、昔のことに思いを馳せることってありません?
「ああ、小学生のとき放課後に食べたブタメンおいしかったなあ」とか。
「ああ、江戸時代は大阪から東京まで20日もかかってんなあ」とか。
「ああ、わたしたちも昔は腔腸動物やってんなあ」とか。(そんなん考えへんわ)
わたしたちのずっとずっとずうううーーーっと祖先にあたるのは、腔腸動物という腸だけの生命体でした。
クラゲ、イソギンチャク、ヒドラなんかがいたそうです。
彼らがどんな風に生きていたのかを知ると、「腸は第二の脳」と言われる理由がわかってきました。
目次
腔腸動物と腸内細菌
むかしむかしのそのまた昔。
40億年も前のこと。
海水中に腸管のような形で発生した生命が「腔腸動物」です。
口とおしりの区別がなく、体の中は管のようになっていたそうです。
彼らには脳はありませんが、腸には神経が張り巡らされていて、異物の判断、食べ物の消化吸収などの命令を出していたそうです。
その腸管の周りには、浮遊微生物がたくさんいました。
それが言うところの腸内細菌です。
腸内細菌たちは、わたしたちがまだ腸管だけの存在だったころから、パートナーとして共存してくれていたのです。
わたしたちと腸内細菌

それから時代は下り、長い長い時間をかけて人類は進化し、およそ5億年前に脳を獲得しました。
しかし、腸管には今もなお脳と直結する一億本の神経系があり、わたしたちの健康に密接に関わっています。
そして、腔腸動物の時代から受け継がれてきた腸内細菌たちも、わたしたちが健康に人生を送る上でとても重要な役割を果たしてくれています。
一億本の神経ネットーワークがあり、腸内細菌と腸管がチームを組んでいる「腸」は、わたしたちの進化の過程を考えれば「第一の脳」と呼んでもいいかもしれません。
なんだか、わたしなんかよりもよっぽど優秀な方々に思えてきます。
わたしのなかに腸は含まれていて、腸内細菌さんたちもそこに住まれていて、とか考え出すとややこしくなってきますけど。
ちなみに腸に住んでくれている菌たちは、なんとなくそこにいるのではなく、わたしたちの体が選んで住んでもらっているのです。
40億年という時間、腸内細菌は結婚相手よりも慎重に選ばれてきた精鋭たちとも言えそうです。
お腹の赤ちゃんも腸からできる

少し余談ですが、受精卵だった赤ちゃんがお腹の中で育っていくときも、進化の過程を忠実に辿っているそうです。
つまり、わたしたちがお母さんのお腹の中にいたころ、最初にできたのは腸なのだそうです。
へその緒を通して送られる栄養を、小腸から吸収できるようになるんだとか。
本当に、よくできていますよね。
自然とか、本能の仕組みに触れるにつけ、わたしたち人間が頭で考える「論理性」なんてちっぽけに思えてきてしまいます。
たまには、頭で考えるだけではなく、腸で起こっていることも想像してみると楽しくなってきます。
この記事を書いた人

- 研究員・広報(菌作家)
-
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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