腸内細菌がうつに関係しているなら、心理学(心理療法)は行き場を失うのか否か

腸内細菌のバランスが、腸疾患のみならず全身の病気、さらには心の病と言われるものにまで関係しているということが、徐々に知られるようになってきました。
いまだに心身二元論を信じたいわたしとしては、なかなか受け入れがたい事実です。(わたしの精神なるものは、肉体なるものには左右されない云々)
そして腸内フローラ移植を受けて、腸内フローラバランスを整えてもらうことで、短期間でうつ状態を抜け出すことができたわけですが、なんとなく悔しい感じはありますよね。(感謝の気持ちを持て)
「いやいや、わたしが悩んでたのは、腹の中の細菌がどうのこうのではなくて、もっと人生のあり方とか、そういうことに対して思考を深めていたからで……」みたいな感じ?
腸内フローラを整えて治る類の悩みだったのであれば、別にわたしの大事な20代前半まるまるかけて悩まなくてもよかったのでは……
とか思ったりする。
心理学の本とか読んで、
「いや、こんな方法論ちゃうねん」ってなって小説読み漁って、
「本当の友人は本の中にしかいない」とか思って。
まあ、それは今も変わらんねんけど。(極力、声帯を使わずに生きたい)
今日は、「腸内フローラ移植で心の病まで治るのであれば、認知行動療法とかは失業するん?」って疑問を、掘り下げてみたいと思います。
目次
腸内細菌とうつの関係

心を穏やかにするホルモンとして有名なものに、セロトニンという神経伝達物質があります。
前回の記事でも書いたように、セロトニンの90%以上は腸で作られます。
もっというと、腸内細菌の働きによって作られます。
全身のほとんどの組織は、脳から信号を送られて、それに従って動きます。
しかし腸だけは、脳と相互通信できるネットワークを持っています。
その数なんと、一億本。
これが言うところの、「脳腸相関」というやつですね。
腸は第二の脳、とも言うし、もう人間って逆立ちして歩いてても腸が脳っぽい感じになって、なんかうまいこと行くんちゃう?
足がトナカイっぽくて、かわいいし。(そういう発想が友達を減らしてるんちゃう?)
神経系と腸内細菌の関係について、そのメカニズムが詳しく解明されているわけではないんですが、腸内細菌のバランス、その働きが心の調子に関係していることはどうやら間違いなさそうです。
当研究所内の移植チームでの会話を一部紹介します。検査結果を見ながらの会話です。
清水「この○○色の子たちが、セロトニンの生成を抑えてるんちゃうかと思うんよ」(清水は、菌たちを「子たち」と呼びます)
ちひろ「マジっすか! そんなんわかるんですか!」
清水「まだわからんけどね〜。神経伝達物質に関わってることは間違いないと思う」
ちひろ「確かに、うつの人の○○色の割合多いですもんね。移植前後であんまりバランス変わってへんやんと思ったけど、○○色はごっつい減ってる」
清水「せやろ」(ドヤ顔)
ちひろ「え、△△の病気の人、めちゃくちゃ○○色多いですけど、大丈夫なん?」(伏せ字多くてすいません。察して。)
清水「そうよ。△△の人は、たいがいメンタル的な問題も併発してる場合が多いよね」
ちひろ「まじでーーー!!! すごいーーーー!!! え、でもこっちの人は移植後に○○色増えちゃってるけど、移植後にテンション下がったんですか?」
清水「そう単純な問題でもないんよね、これが」
ちひろ「ですよね」
こんな感じで、わたしには理解不能な領域で研究は進んでいるみたいです。
わたしにできることって、いったいなんなんやろう。わたしって、間食ばっかりして、「逆立ちしたら腸が脳になって、足がトナカイ云々」みたいなことばっかり考えてる、役立たずのゴミ屑なんやろうか……ずーん………(○○色細菌増殖中)
うつにもいろいろありますよね
さて、「うつ」とひとくくりにしていますけど、当然のことながらうつにもいろいろありますよね。
というか、肉体的な疾患はあんなにも無駄に(無駄に言うな)種類が豊富やのに、うつってわりと十把一絡げにされません?
とりあえず心療内科行っといてね〜みたいなノリが全員に適用される。
ほんで、病院行った段階で、ほぼ診断名がもらえるのも、「うつ」が誤解を招きやすく、やっかいな原因やと思う。
躁うつ病、パニック障害、強迫性障害、摂食障害、適応障害。
発達障害の二次的な症状として、精神的な病気になる場合も多くある。
精神疾患にもいろいろ種類があるのはもちろんですが、その原因もいろいろありますやん。
仕事が忙しくて毎日カップ麺で暮らしてたとか、
ホルモンバランスが乱れてて、生理前にうつ症状が強く出るとか、
経営してた会社がいきなり倒産したとか、
逆に突然50億当たったとか、
愛犬が亡くなったとか、
パーソナルスペースめっちゃ必要なタイプやのに、毎日1時間満員電車に揺られてるとか。(これわたし!わたしです!!!!!!!!ツライよ〜)

これらが一次的なことであればいいんですが、長く続いてしまうと肉体がそれに影響され、心身がその「悪い状態」を記憶してしまうようになるんではないかと思います。
そして、負のスパイラルから抜け出せなくなる。
表に出てきているうつ症状にアプローチしようとすると、これらの「背景」もしっかり見ておく必要があるはずです。
心理学的側面から見たうつ患者に対する移植効果補助機能
さて、そろそろ今日の核心の部分にせまってきましたが、「うつ患者に対する腸内フローラ移植」と、「心理学の行き場」の話にいよいよ入りたいと思います。
主治医からうつ病と確定診断がついている方への「腸内フローラ移植」は、まずセロトニンをがんがん増やす方向で移植をします。
交感神経優位からくる体の痛みや不眠に対して、副交感神経へ切り替えることを期待しています。
それに加えて、精神疾患系の患者様とは「お話」の時間も多めに取っています。
心理療法と呼べるほどのものではないですが、心理学的な働きが移植効果を助けてくれると信じているからです。
腸内フローラ移植によって体は楽になり、エンジンがかかります。
また、溝に落ちて空回りしていたタイヤも、道路の上にちゃんと戻してくれます。
これが、体の実感と、捉え方が変わりますと患者様に説明していることです。
切り替えの話は、前の記事でも書きました。

けれど、実際に車を運転して人生という道を進んでいくのは、患者様自身だからです。(人生という道やって。いいことゆうた)
心理カウンセリングによって、わたしたちは患者様に「地図」をお渡ししているのだと思っています。
道を選ぶのは患者様だけれど、道に迷わないようにほんの少しお手伝いする。
腸、つまり肉体が精神に影響を及ぼすように、心理的な変化によって結果的に腸内フローラが変わり、脳へきちんと電気信号が送られるようになることも多少はあるのではないか。
そんなふうに信じて、移植前後のお話時間も大切にしています。
提携医療機関は、患者様との対話を大切にしてくださるところばかりです。
移植を受けて、はい解決! ではなく、いましんどくなってしまった原因を考え、また走り出せるまで寄り添ってくれますので、どうか安心してください。
心理的アプローチで、その他の病気の移植効果も変わる?
実は、精神疾患だけではなく、どんなご病気の方でも「お話」の時間が大切だと感じています。
前の記事で腸内細菌は物語だ、というようなことを書きましたが、病気もその方の物語から出てきたものだと考えています。
一緒に紐解いていくことで、同じ病名がついていても移植アプローチが変わることも大いにあります。
その人によって、いい腸内フローラバランスやタイミング、濃度は変えていくことが大切なんです。
そして、ご自身の体で起こっていること、それが新しい腸内細菌が入ることでどう変化していくのかをイメージしていただく。
そうすると不思議なことに、腸内細菌たちは元気に頑張ってくれることがわりにあります。

移植後は「よしよし、増えろ増えろ〜」とお腹をさすってあげてください。
うちの研究員はいつもラボの神様に手を合わせ、一回一回の菌液にパワーを込めています。
どうかご自身のエールも腸内細菌たちに送ってあげてください。
「エビデンスがうんたらかんたら〜」という現代の医療の常識からすると眉唾かもしれませんが、これがね、ほんとうに結構大事なんですってほんと。
せっかく受けてくださるのなら、医療界で言われるところの「プラセボ効果」の恩恵も最大限に受けられる心理状態になっていただくことも、ご提案したいことです。
ちなみに、ご病気を患っておられる方は精神的にも参っておられる場合がしばしばです。
そりゃそうですよね、不安にもなるし、治療もしんどい。
そういったことも踏まえて、弊所ではどのドナーもある程度の「メンタル穏やかになる系」の菌たちを持っています。
あ、これ言ってよかったんかな。
まあ、いっか。
【結論】
うつなどの精神疾患のみならず、あらゆる病気や不調において、心理学的アプローチはめちゃくちゃ大事だと思います。
病気になるのも、治るのも、メンタル的な影響って少なからずある。
特に腸内フローラ移植については、心理学と相性がいいと個人的には思っています。
なので皆さん、移植前後はできたら好きなことしていただいて、小さなことに「幸せ」と「感謝」を感じるようにしてみてください。
全然、「できたら」でいいんで!
なんやったら、お茶でも淹れますよ!
この記事を書いた人

- 研究員・広報(菌作家)
-
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
スタッフ紹介はこちら
最新の投稿
腸内フローラ移植2021.11.02FMT(便移植、腸内フローラ移植)の未来を真剣に考える会
腸内フローラ移植2021.10.26FMTのゴールは? 移植回数と事前抗生剤投与が菌の生着に与える影響
腸と健康2021.10.19ちょうどいい炎症状態って? 免疫のエンジンとブレーキ、Th17とTreg
腸と健康2021.10.12腸にいい食生活をお探しの方へ(レシピ付)

《特許出願中》
腸内フローラ移植
腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)