ヨーグルトが腸活で崇拝される理由と、これからのプロバイオティクス

ちひろです。

「腸活」という言葉がにわかに使われるようになってきました。
具体的にどういう行為を指すのかは、その企業が何を売りたいかによって変わってくるようですが、健康的な腸内環境を目指そうという意識が高まっているのであれば喜ばしいことです。

腸活界隈でもっともマーケティングに成功していると言える製品のひとつが、ヨーグルトです。

ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌が、腸になんか「エエこと」をしてくれそう。腸内細菌のバランスも整えてくれそう。
だって彼ら、善玉細菌だから!

いや、いろいろ書いてるんですが、決してヨーグルトそのものやヨーグルトメーカーを揶揄するつもりはありません。

わたし自身、つい半年ほど前まで400g入り無糖ヨーグルトを一日1パック〜1パック半、特に腸のためというわけでもなく嗜好品として平らげていました。
種類はビヒダス、恵、ブルガリアヨーグルトのうちから、スーパーで安いやつをまとめ買いしていました。
どれが一番好きかという問いに答えることは難しいです。
そのときの気分によって、どれも好きやった。(あんたの好みはどうでもいい)

つわり以降、なぜかヨーグルトを受け付けない身体になってしまったんですが、ヨーグルトはかつての旧友って感じです。

生きた有益な微生物を含む、プロバイオティクス食品

さて、腸活を実践されているみなさんなら絶対に聞いたことがあるであろう言葉「プロバイオティクス」。

プレバイオティクス、シンバイオティクス、ポストバイオティクスなど、いろいろな腸活ツールがあり、これらの言葉がパッケージに載っている商品も少なくありません。

WHOの定義によると、“live microorganisms which when administered in adequate amounts confer a health benefit on the host”(生きている微生物で、適量を摂取すれば宿主の健康に寄与する)ということになっています。[1]Probiotics、Food and Agriculture Organization and World Health Organization Expert Consultation. Evaluation of health and nutritional properties of powder milk and live lactic acid … Continue reading

誤解のないように言っておくと、生きた微生物と言いましても「食べた時点で生きて」いればいいわけで、生きたまま腸に届かないとプロバイオティクスにならないというわけではありません。

はじめて聞いたときには「エッ、微生物を摂取!?」となんとなく気持ち悪かったんですが、よう考えたら納豆にも漬物にもチーズにも微生物わんさか入ってるし、なんならわたしのお腹にもわんさかいましたね!

ちなみにWHOの定める「この食べ物はプロバイオティクス認定していいかどうかガイドライン」[2]Guidelines for the Evaluation of Probiotics in Foodを参考までに載せておきます。

ご覧のとおりけっこう厳しいですが、パッケージにプロバイオティクスと謳っている製品のひとつひとつが全部この試験をしているとは考えにくい。

ヨーグルトはプロバイオティクスなのか問題

ヨーグルトも優秀なプロバイオティクスと言われる場面が多くありますが、実を言うと「適量を摂取すれば宿主の健康に寄与する」という文脈において、メーカーの宣伝でわたしたちが認識しているほどのご利益があるかというと、ちょっと微妙なところなんです。

わたし一人の体験談にはなりますが、実際ヨーグルトをあれだけ食べていた期間と、その前や現在で健康状態や便の状態に差があるのかと聞かれると、残念ながら首をかしげざるを得ません。

ずっと腸内フローラバランス検査やってるけど、たいして変わってないし。(つわりのときだけは結構変わってた。これは驚きやった。でもまた戻った)

ただ、ヨーグルトにたくさん含まれている「ラクトバチルス」という乳酸菌を製剤化したものは、下痢症状の緩和に役立ってくれるという臨床試験の結果もありますので、ヨーグルトはプロバイオティクスであると言うことも可能であるかと思われます。[3]Probiotics for the Prevention and Treatment of Antibiotic-Associated Diarrhea: A Systematic Review and Meta-analysis | Complementary and Alternative Medicine | JAMA | JAMA Network[4]Probiotics for prevention of necrotizing enterocolitis in preterm infants – PubMed

実際、ヨーグルトを食べることでなんか健康になった! って人も結構いるし。

なぜヨーグルトがもてはやされるのか

プロバイオティクスはそもそもの定義が「身体にエエもん」っていう定義なので、
「プロバイオティクスは身体にエエのか?」っていう問いは成り立ちません。

ただ、今現在プロバイオティクスとみなされている食品が本当にプロバイオティクスなのか? についてはよくよく考える必要があります。

例えばヨーグルト。
プロバイオティクスの代表例みたいになっていますが、なぜヨーグルトなのか、なぜラクトバチルスが選ばれたのか、その歴史を探ってみると、腸活のために無理にヨーグルトを食べる必要はないんやという結論に至るかもしれません。

微生物を含んだ食べ物がなんか身体に良さそうやんとなった場合。
あなたが商品メーカーの創業者だったら、どうしますか?

その食べ物に含まれる菌を特定して、その菌を培養して、それを原料となる食べものに入れてたくさん製造して売ろうと思いませんか?

この過程ですごく簡単に量産できたのが、ぬるい牛乳にラクトバチルスを加えた結果できあがるヨーグルトだったというわけです。

何がいいたいかと言うと、ラクトバチルスという菌がプロバイオティクスでもてはやされたのは、ラクトバチルスが特別いい菌だからというわけではなく、簡単に増えたからという理由が第一でした。

裏を返せば、今の次世代シーケンサーでDNA解析をしてやっとこさその存在がわかったような大部分の難培養菌は、プロバイオティクスとして適格かどうかを判断される土俵にすら上がれなかったわけです。

牛乳の中でたくさん増殖することからもわかるように、ラクトバチルスは乳糖をエサにして増えます。
なのでヒトの腸内では、母乳を分解する時期である新生児期には多く存在するんですが、離乳食期以降には急激に減っていきます。

大腸に全部で100兆もいる腸内細菌の海に何億かのラクトバチルスが入ったヨーグルトを食べても大して腸内には定着しないのですが、そもそもそんなにせっせと補充する必要がある菌なのかどうかも、あまり検討されていないんじゃないかと個人的には思います。

これからのプロバイオティクスと腸活

さて、そうは言っても。
太古から受け継がれてきた腸内細菌たちを急速に失っている人類にとって、プロバイオティクスが今後ますます重要な存在になっていくであろうことは言うまでもありません。

臨床現場におけるプロバイオティクスの使用について、2021年6月23日付けの最新の論文でまとめられています。[5]Probiotics: A Review for Clinical Use – General Surgery News
感染性の下痢、IBD、IBS、便秘、低体重児、肝性脳症など、幅広い疾患で検討されています。

今後のプロバイオティクス、ひいては腸活はどうなっていくんでしょうか?

含まれる菌の種類が変わっていく

DNA解析によって難培養性の菌たちが特定されたものの、その菌を増やすことができない! ってのは悔しすぎますよね。

でも大丈夫。
見つけるだけ見つけて何もできない「真夜中の蚊との格闘」とは違って(わかる。為すすべもなく両手だけスタンバイ)、
人類は難培養性の菌たち、言い換えると嫌気環境下でしか増殖しない菌たちを培養する技術を開発しました。

人類と言うか、北里柴三郎氏という偉大な人。[6]医療の挑戦者たち(30)破傷風菌の純粋培養(北里柴三郎)

代表的な嫌気性菌のプロバイオティクスは、酪酸菌製剤である「ミヤBM」や「ビオスリー」などが挙げられるかと思います。

いま注目されている菌としては「フィーカリバクテリウム・すぷらっつぅうにんにっ」みたいな名前のやつがおります。(後半絶対間違ってるやろ)

含まれる菌の数が増えていくorオーダーメイド化

どんなにいい菌でも、それ単一で健康に良い働きをしてくれる菌はいません。
他の菌との連携プレーで、宿主の健康に寄与してくれています。

そこで登場するかもしれないのが、複数の菌を同時に摂れるプロバイオティクスか、その人に足りない菌をカスタムして組み合わせて提供してくれるサービス。

腸内フローラ移植は、健康なドナーの腸内フローラをそのまま患者さんにお届けします。
ある意味、究極のプロバイオティクスな気がする。

プレバイオティクス食品やサプリメントだけが腸活じゃない

ところで、菌を補ってさえやれば健康になれるかというと、そうでもありません。
健康って、一度失うと取り戻すのめっちゃ大変ですよね。

腸内環境を元気にすることにせっかく意識が向いたなら、納豆やヨーグルト、食物繊維、それに準ずるサプリメントをせっせと摂取する前に、もっとできることがあります。

繰り返しになりますが、
・十分な質のいい睡眠
・バランスの良い食生活(納豆を一日に10パック食べるとかはほんま意味ない)
・適度な運動
に尽きます。

ほんまに。
健康情報をググってる暇があったら、ちょっと近所を散歩して、素材から料理したもの食べて、早めに寝て。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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References

References
1 Probiotics、Food and Agriculture Organization and World Health Organization Expert Consultation. Evaluation of health and nutritional properties of powder milk and live lactic acid bacteria. Córdoba, Argentina: Food and Agriculture Organization of the United Nations and World Health Organization; 2001. [cited 2005 September 8]. 
2 Guidelines for the Evaluation of Probiotics in Food
3 Probiotics for the Prevention and Treatment of Antibiotic-Associated Diarrhea: A Systematic Review and Meta-analysis | Complementary and Alternative Medicine | JAMA | JAMA Network
4 Probiotics for prevention of necrotizing enterocolitis in preterm infants – PubMed
5 Probiotics: A Review for Clinical Use – General Surgery News
6 医療の挑戦者たち(30)破傷風菌の純粋培養(北里柴三郎)
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腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)