感染症について本気出して考えてみた

どういうわけか、「感染症」という言葉に注目が集まっています。(理由は火を見るより明らかやろ)

テレビもネットニュースも新聞も見ないんでよくわからないんですが、たぶんめっちゃ怖いんやと思う。感染って。
字からしておどろおどろしいもんな。
「感染」と「健康」を見比べたら、なんか前者のほうが怖いもんな。なんとなく。

マスクはせなあかん雰囲気やし(遊具のない公園でマスクする意味って何なん?)、スーパーで透明のやつ越しに店員さんに話しかけられて「なんですって??」って身を乗り出さなあかんし。

みんな、なんでかわからんけどみんなしてるし、会社に言われたからしている行動っていっぱいあると思う。

感染症というものに対する見解や知識の温度差もあって、情報が氾濫しすぎてて、どれを信じたらいいかもわからんし。
そもそも気分が暗くなるから、「コ」さん関連のニュースは見いへんようにしてる人もいるやろし。

というわけで今日は、「コ」さんの話題には一切触れずに、人類がその歴史上で戦争と同じくらいずっと戦ってきた「感染症」について、ちょっと理解を深めたいなと思います。

感染する、という状態

感染したって、どういう状態やと思います?

細菌かウイルスか知らんけど、何か得体のしれない生き物が体に入ってきて、具合が悪くなるってこと?

だいたいこういうイメージちゃう?
このブログ読んでくれてはる人は、もうちっと詳しい方もいらっしゃると思いますが。

これ、4分の1くらい正解です。
逆に、残りの4分の3くらいを知らないおかげで、感染症を間違って認識してる可能性もあるかもしれへん。

これって悲しいことですよ。
取引先にたい焼きもらって、
「あー! ここのたい焼き美味しいですよね! ありがとうございます! 美味しくいただきます!」まで言って、
「そう? 喜んでもらえてよかったわぁ〜。毎回買ってくるね! ちひろちゃんには10個買ってくるね!」って言っていただいたときみたいな、ほんのりした悲しみですよ。

いやありがたいし、たい焼き好きやけど、ほんまはつぶあんじゃなくてカスタードがよくて、次回はできれば隣のベビーカステラ屋さんやと嬉しくて、実は最近太ったからおやつは控えてることを伝えそびれたときみたいな。(別におやつは控えてないのでどんどん与えてください)

感染の3要素

感染という状態が実現されるためには3人の登場人物が必要です。

  • 感染源…感染の原因となった微生物を含むもの
  • 感受生体…感染の原因となる微生物が侵入・増殖した生体
  • 感染経路…病原体となる微生物が感染源より感受生体に侵入する経路

これらを「感染の3要素」と呼びます。[1]感染の基礎知識|医療情報ガイド│株式会社ホギメディカル

感染の成立

上記の3人の登場人物が出揃ったら、とりあえず感染の準備は整います。
でもこれだけでは「感染した」ということにはならないんです。

微生物が生体内に侵入し、生体内で定着・増殖し、寄生の状態になった場合を「感染した」といいます。

感染の基礎知識|医療情報ガイド│株式会社ホギメディカル

うーん、難しいですね。
つまりどういうことか?
こういうことです。

やっぱり図にするとわかりやすいですね。
微生物の絵が一枚目と違うくてすみません…。絵は自信なくて。(ツッコみたいのそこじゃない)

ちなみに寄生というのは、
「他所の人のお家に居候させてもらう」って感じです。ご飯の面倒も見てもらうし、あったかいお風呂にも入れてもらう。お世話になります!

自分で勝手に増えられる細菌は、結核菌など一部の菌をのぞいて、細胞の外で増えます。
一方でヒトのDNAやRNAを借りて増えるウイルスは、細胞の中で増えます。[2]ウイルス感染症の概要 – 16. 感染症 – MSDマニュアル家庭版
ウイルスのほうが、出ていっていただくの大変そうな感じしますよねえ。

細菌とウイルスの違いについておさらいしたい方は、こちらの記事(菌とウイルスは違う! インフルエンザの賢い増え方や治療法)も見てみてね。

感染症の挙動いろいろ

感染というものを説明するだけで長くなってしまいましたが、感染が成立してもただちに「具合が悪くなる」わけではないんですよ。
ここがさっき、4分の1だけ正解って言った理由です。

顕性感染と不顕性感染

細菌やウイルスが体の中で増殖して、熱が出たり下痢を引き起こす。
これは「感染が成立して、さらに顕性感染になった状態」を指します。[3]1-1. 感染症ってなに?  | 日本BD

一方で、知らん間に感染してて、免疫もできてしまったわ〜というパターンもあります。
新型のインフルエンザが出た年に、家族全員かかって寝込んでるのに、オカンだけぴんぴんしてるってことありません?
これ、オカンが感染していないってのは考えにくくて、オカンは感染してるのにそれに気づいてないっていうだけなんです。

症状として体に出てくる前に、自分の免疫力が細菌やウイルスを倒してしまったパターンです。これが不顕性感染です。

不顕性感染が長ーく続いて、もはや自分の家で下宿させてあげる状態になっていることを潜伏感染と呼んだりもします。
何人もドナー検査していると、たまに「え、この人病原菌感染してんで! なんで元気なん!?」って人に出会うことがあります。
鋼の免疫力。うらやましいですねえ。
患者さん向けのドナーとしては不合格になってしまうんやけど。

菌交代症、日和見感染

健康な状態では普通に体で共生していたり、病気を引き起こすことのない弱い微生物たちが、特定の環境下で病原性を発揮することもあります。

菌交代症というのは、近年問題になっている薬剤耐性菌の異常増殖などで起こる疾患です。
ごめん、難しい言葉使った。ゆるして。
たまに難しい言葉を使うことで、ちゃんとしてる感を出そうとするチキン野郎なんです。

例えば、ゆで卵って健康にいいじゃないですか。
完全栄養食と言われて、その座を何十年も守ってますよね。
少なくとも、アレルギーとかでない限り、健康に悪い食べ物ではないはず。

でもね、糖質制限という薬を投入されて、毎日ゆで卵12個食べる生活になったらどうする?
嫌じゃない?
健康も損ないそうじゃない?
抗生物質などの薬剤に耐性を持った菌が異常に増える菌交代症というのは、こういう状態なわけです。

ほかにも、自分の免疫力が弱ってるとき、たいして危険じゃない微生物の感染で重症になる場合もある。
例えば、りくろーおじさんのチーズケーキの行列に並んでて、自分の目の前で売り切れたとするやん。
もう傷心ですよ。やけ酒ですよ。
その状態で家に帰って、インスタでりくろーおじさんのチーズケーキにありつけた人の投稿とか見たとするやん。
それで自宅の冷蔵庫を開けたら、めっちゃ苦手ならっきょう漬けとか入ってたらどうする?

悲しみに打ちひしがれて、次の日会社休んじゃうよね。
日和見感染って、そんな感じ。

感染症界隈に革命が起きた1928年

そう。臨床検査技師のみなさんならこの数字に覚えがあるでしょう。
アレクサンダー・フレミング氏がペニシリンを発見した年です。

ペニシリンのおかげで、感染症によって命を落としていた人々が助かる確率は飛躍的にあがりました。
ペスト、梅毒、コレラ、結核、チフスなどの感染症が克服されるにしたがって、人類が予期せず命を落とすことも減ってきました。

わたしのおじいちゃんおばあちゃんの時代は、子供は7〜8人きょうだいが普通やったそうです。
その理由が「半分も成人できへんかもしれんから」って聞いた時は戦慄した。[4]第2表 人口動態総覧(率)の年次推移 (2-1)|平成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

現代でも感染症によって突然命を落とすことはなくはないけど、劇的に減っていますよね。
代わりにがん、糖尿病、心筋梗塞なんかが増えて、「死ぬ前の病気期間」というのは逆に長くなっている気がします。
若いうちに鬱、潰瘍性大腸炎、アレルギーなんかになることも多いし、人生ほとんど何かしら病気やわって人もけっこういるのでは。

感染症ってなんなんやろう

ここまで感染、感染症についていろいろ調べてきました。
つまるところ感染というのは、体内外の微生物が予期せぬ形で体内で増殖することであり、人間にとって困るのは「それが症状として現れること」と言って良さそうです。

それでちょっと待てよと思ったんです。

がん、糖尿病、アレルギー、鬱、潰瘍性大腸炎、自閉症スペクトラム。
これらの疾患って、すでにいくつもの研究で「腸内細菌と関係がある」ことがかなりわかっているじゃないですか。

菌交代や日和見感染も感染症ならば、上に書いた疾患も全部、広義の意味では感染症って言っていいんじゃないだろうか。

次々に耐性菌や新型ウイルスが発生して、微生物は関係ないと思われていた疾患も、実は微生物が関連していたことがわかってきて。

人類と微生物の戦いは、ペニシリンによって全然終止符を打ってなんかいないんじゃなかろうか。

健やかに感染するということを目指してもいいのかも

ここまで読んでいただけた方なら、「感染≠発症」であるということはおわかりいただけていると思います。
そして感染症というのは、「特定の悪者が体内に侵入してくること」と同義ではないのだと。

つまり、どんな微生物であっても、体の中で悪さをしなければ、一緒に暮らしていけるんです。何の問題もなく。
なんなら用心棒にすらなってくれるかもしれへん。

これからの時代は〜云々、とかえらそうな言い方をするつもりはないけど、
「なぜ菌やウイルスが自分たちの健康にマイナスに働こうとしているのか」を胸に手を当てて考えてみたいと思う。

それはたぶん、我々のほうが彼らを先に嫌ったからちゃう?
どんな微生物も仲間になって助けてくれるポテンシャルはあるやろうし、もし自分を死に至らしめる微生物に感染して発症したら、もうそれは「わたしはこの子に殺されるべき存在やったんや」って思おう。

30代は自分の器をでかくしたいなと思ってるんですが、
「どんな菌にとっても住み心地のいい生体」っていう意味での器のデカさ目指そかな。

オフショット

感染の3要素の画像をつくるとき、何枚か撮ったやつ。
菌やウイルスと戯れて、楽しそうじゃない?

リモートワークがはじまって、みんな上半身だけ整えたらいいみたいな風潮があります。
それってどうかと思うねん。

わたしは、リモートワークでも出勤の日でもすっぴんを心がけてきたし、
そういう意味では先駆者と言ってもいいな。(何の話や)

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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