1982年から続けてきた微生物の基礎研究や医療機関における臨床を経て、独自の腸内フローラ移植(便移植)方法を開発しました。微生物たちとの共存共栄には、無限の可能性があると信じています。
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不定愁訴の原因は「経口免疫寛容」にあるかもしれん【腸と免疫シリーズ8】

不定愁訴

免疫シリーズをきちんと終わらせないまま、またも二ヶ月経過。
ほんとにすいません。

前回の記事「《もっと詳しい》免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ7】」を読み返しながら、

「なるほどなぁ。なかなかうまいこと書いてるやん、自分。でもほとんど忘れたわ」ってなりました。
忘れるって、人間の大切な機能ですよ。(その態度は、捨てるべき機能やで)

「不定愁訴」という言葉を聞いたことはおありでしょうか?
もしかしたら、お医者さんにそう言われた人もいるかもしれん。

不定愁訴って、憂いを含んだ瞳を持ち、ため息まじりに諦めたような微笑みを見せるか細い女性に使われるイメージですよね。(激しく偏ったイメージ)

診察や検査をしてもはっきりとした原因がわからないのに、本人にとってはつらい症状が慢性的に続く状態です。

頭痛、胃がむかむかする、肩がこる、イライラする。
食べるものによって湿疹が出たり、お腹が張ったり、胃液がせり上がる感じがする。
よく眠れない、お腹の調子が悪い、やる気も出ない、食欲もムラがある。などなど。

原因がわからないから対処方法もわからなくて、「そもそもこれって私の思い込み?」とめっちゃ落ち込むことも。

こんなふうに、常になんとなく調子が悪くて、入院とか寝たきりになるほどではないけど、
バリバリフルタイムで働きますっ!というほど元気ではない状態がなが~く続いておられるケース、珍しくないみたいです。

免疫の勉強をしていると、「ハッ、それって経口免疫寛容がうまく獲得できていないからでは」と思うときがあります。

嘘です。所長に教えてもらっただけです。(まだまだ修行中)

拒絶する城壁ではなく、門を開く寛容さが強さを育む

ダイバーシティ

これ、名言じゃないです?
昨今のダイバーシティ傾向を象徴するような言葉です。

何人も寄せ付けないような高くて頑丈な城壁を築いている国よりも、広く門戸を開けて自由に貿易させたり、文化の交流を図る国のほうが強さを獲得できるというわけです。

これ、孔子が書いた『論語』の中にある、「開城勝閉城」という言葉なんですけど。(いやお前が作ったやろ。漢字の並びがセンスなさすぎやわ)

この孔子の言葉と同じように(あくまでも孔子でいくつもりやな)、
人間の身体も「外の要素をあえて受け入れることで、自分も強くなる」みたいな面があります。

例えば、本来なら異物であるはずの食べ物にも過剰に反応することなく受け入れられていること。
自分以外のすべてに反応していたら、生きるために食べることさえできなくなってしまいます。

経口免疫寛容とは

経口免疫寛容

経口免疫寛容というのは、理論的には2010年ごろにその仕組みが解明された、比較的新しいものです。
(参考:食物アレルギーの画期的な治療法につながる経口免疫寛容の仕組みを発見

わたしたちの身体に備わっている免疫システムは、自己以外の異物を攻撃して排除することで、自己を守ろうとします。
でも、お寿司やカレー、アイスクリーム、パン、卵焼きなど、わたしたちが生きていくうえで必要な栄養素にまで免疫が反応し、排除しようとしてしまうと、わたしたちは生きていくことができません。

アイスクリームが食べられなかったら、シュークリームを食べればいいじゃない、なんて思った方は、
毎朝5分間東を向いて「免疫寛容に産んでくれてありがとう」と母なる太陽に感謝してください。

食べ物を美味しく食べ、身体の栄養にしていくうえで大切なのが、身体に有益なものには反応しない「免疫寛容」という仕組みです。

通常、食べたものに含まれるアレルゲンなどは胃酸や消化酵素でぐっちゃぐちゃのドッロドロに細かく分解されます。(言い方。)
消化されずに届いてしまった場合でも、身体が「これは大丈夫」と知っているので、過度に反応することはありません。

これを「経口免疫寛容」といいます。

こちらの図を見てください。

経口免疫寛容
※画像引用:経口免疫寛容の分子生物学より

詳しく知りたい方はリンク先を見ていただければと思いますが、

要は「ガゼイン」というアレルゲン物質がありますと。
ガゼインを含むエサと含まないエサを与えていたマウスに、それぞれガゼインを注射しますと。
すると、ガゼインを含むエサを食べていたマウスのほうが、あまりガゼインに対して過度な反応を示さなかったというわけです。

「あ、ガゼインね〜知ってる知ってる。いつも食べてるやつじゃん?」って感じやな。

経口免疫寛容というのはざっくり言うとこんな仕組みで、口から摂取することで、身体の免疫システムに「有害ではない異物」としての食べ物を覚えてもらうことなんです。

赤ちゃんが経口免疫寛容を獲得するまで

経口免疫寛容

生まれたての赤ちゃんというのは、いろいろな食べ物に対してまだ未知なところが多いです。
この世に生まれてきて、目にするもの、手にするもの、耳にするもの、口にするものすべてが「新しい出会い」なわけですから、当然といえば当然です。

身体の免疫システムも未熟で、何に対して反応すべきか、迷うところもあります。
とりあえず、自分を守るのは優先やし、全部に反応しとく? という具合に、食べるものに片っ端から反応することもあります。

通常は、母乳を通してお母さんが食べたものに対する経口免疫寛容が形作られていきます。
母乳には、赤ちゃんが免疫力を高めるための様々な成分が含まれています。

免疫が反応すべき対象としての食べ物(食物抗原)や、それに対応するIgAやIgGなどの抗体の情報、
免疫を寛容な方向へ誘導するための分子(B7-H1とB7-DC)、
腸内細菌のエサにもなるオリゴ糖などです。

味、ぜんぜん覚えてないけど、どんな味やったかな。(ミルキーみたいな感じちゃう?)

そして、離乳食を通して徐々にいろいろな種類の食べ物を口にする過程で、免疫の寛容さを獲得していきます。
消化機能の発達、腸内細菌や腸管粘液の構築、そしてこの経口免疫寛容などを通して、「いらんやつは排除、有益なやつは受け入れる」という立派な免疫システムが整うわけです。

これができあがるのが、だいだい胸腺の免疫教育が終わる17〜18歳。
赤ちゃんのときには食物アレルギーがひどかった子が、思春期には治っているのはこういうわけです。

今は、食物アレルギーの治療法として、あえて少しづつアレルギー反応を起こす食品を食べさせ、経口免疫寛容をつけさせる方法まで出てきています。

大人になっても経口免疫寛容がない場合

不定愁訴

ずっと偏食や食欲不振で経口免疫寛容がうまく育まれなかったり、
何らかの原因で体外から入ってくるものに過剰に反応する状態が大人まで続いてしまった場合、身体に様々な不調が現れることがあります。
(ここでは、自分に反応してしまう自己免疫疾患については触れないでおきます。)

  • 食物アレルギー
  • 便秘
  • お腹が張る感じ
  • 胃がむかむかする
  • 食べているのに体重が減る
  • 食後の気分や体調の変化が激しい
  • いつも疲れが取れない
  • よく眠れない
  • とにかくイライラする
  • いつもなにかに追い立てられている気がする

こういった症状に悩んでいる方は、少なくないと思います。
原因がよくわからず、でも身体も気分もしんどい。

「不定愁訴」と片付けられてしまうその症状、もしかしたら「経口免疫寛容」がうまく働かずに、「経口免疫過剰」になっているせいかもしれません。

例をあげて、各症状と経口免疫寛容のつながりを見てみましょう。

  1. 経口免疫過剰のため、食べ物やサプリ、薬に過剰に反応してしまう
  2. そのため、食べ物の代謝と解毒がうまく働かず、適切な消化吸収ができない(体重減少)
  3. 食べ物がいつまでも腸にとどまり、便が作れない(便秘)
  4. 栄養が吸収できないため、栄養不良状態が続き、空腹感がある
  5. 慢性的な飢餓状態&常に免疫が攻撃状態のため、交感神経が常に優位
  6. 調子が悪いのに、交感神経優位状態のため狂気的とも言えるエネルギーがある

このような状態が身体の中で起こっていることも考えられます。

経口免疫寛容を獲得するには

好き嫌い

経口免疫寛容と腸内細菌が非常に深く関連していることは、多くの論文などで明らかにされています。

食物アレルギーと乳児の腸内フローラとの関係に関することや、
(参考:Infant gut microbiota and food sensitization: associations in the first year of life

経口免疫寛容を実現するために必須である「Tregリンパ球」も、腸内細菌の働きが重要です。
腸内細菌が、身体の中で使うビタミンや有機酸(短鎖脂肪酸など)を生み出してくれているのですが、このビタミンや脂肪酸が、Tregを誘導してくれるのです。

この50〜60年のあいだに、日本の野菜に含まれるミネラルやビタミンの含有量は著しく減っていますから、腸内細菌が作り出すそれらの物質がいかに大切かがわかっていただけるかと思います。
(参考:中身はスカスカ…野菜からミネラルやビタミンが大幅に減少

ものすごくざっくり言いますと、「免疫システムを正常にしたければ、腸内フローラを整えましょう」ということになります。
この一言をいうのに、なんで4,000文字近いブログ記事になるのだろう。

1,Tregを増やしてくれる腸内細菌が元気になると、経口免疫寛容が実現できる。
2,すると、摂取した食べ物の代謝の正常化を促進する腸内細菌による、消化吸収の改善が期待できる。
3,同時に、神経伝達物質の生成を正常化する腸内細菌による、交感神経優位な状態を脱する効果も、サブで発揮してくれる。
腸内フローラ移植による改善を目指す場合は、このような移植方針で菌液を調製しています。

免疫というのは、知れば知るほど自分を生かしも殺しもするなあ、とつくづく感じています。
というわけでみなさん、経口免疫寛容を育むためにも、好き嫌いせずになんでも美味しくいただきましょうね!

【前回までの免疫シリーズ目次】
免疫力が大切っていうけど、そもそも何なん?【腸と免疫シリーズ1】
免疫の異常と疾患のものすごく深い関係【腸と免疫シリーズ2】
四段構えで身体を守ったり保ったり【腸と免疫シリーズ3】
自然免疫でパトロールして、獲得免疫でいざ出陣【腸と免疫シリーズ4】
男子のケンカ(細胞性免疫)と女子のケンカ(液性免疫)【腸と免疫シリーズ5】
免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ6】
《もっと詳しい》免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ7】

▼次の免疫シリーズの記事▼
不妊と妊娠を隔てている一因は、Tregと腸内細菌のコンビ愛である【腸と免疫シリーズ9】

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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。 でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。 いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。 ご挨拶と自己紹介も併せてご覧ください。
腸内フローラ移植(便微生物移植)を知っていますか?
わたしたちの腸に暮らす腸内細菌たちと健康との関連が、世界中で次々に明らかになってきています。 「すべての病気は腸から始まる」と言われるように、腸内環境が崩れると病気を引き起こすことが知られています。
健康な人の腸内フローラを移植することで、ふたたび健康を取り戻そうという治療法に期待が高まっています。
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