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《もっと詳しい》免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ7】

腸管免疫

もう一週間ほどで父の日ですね。
最近は毎年お酒ばっかりですが、そろそろ健康的なものあげたい。

わたしのうんちを菌液にしてあげよかな。(まず大きな誤解から始まると思うで)

ところで、大阪ってもう梅雨入りしたんですかね?
三室戸寺のあじさいを見に行きたいので、お父さん誘おう。

前回の記事で、腸管免疫は「微生物学的バリア」、「物理的・化学的バリア」、「リンパ球たち(T細胞、B細胞)」によって機能しているという話をしました。

では、それぞれ具体的にどんな働きをしているのか?
特にリンパ球たちの働きに焦点をあてて見ていきましょう。

微生物学的バリア

腸内フローラ

前回もお話したように、腸内細菌たちはすでに「安定したコミュニティ」を築いているんです。

口からヨーグルトとか、納豆とか、乳酸菌サプリメントとかをどんどこ摂っても、「本当の仲間」としてはなかなか迎えてもらえません。
そう、東京から田舎に移住してきたオシャレな夫婦が、いつまでも地元民にうまく溶け込めないように……(切ない)

とはいえ、発酵食品やサプリメントも身体に有益な働きはしてくれます。
長くなるのでここでは割愛しますが。

このように、腸管内ですでに微生物たちによるバリアが働いています。
人間の組織である「粘液」の前に、まず人間以外の微生物が人間の免疫として働いてるって、神秘的すぎません?

健康な腸内フローラバランスであれば、多少おかしな菌が入ってきても出ていってもらえます。
が、腸内フローラバランスが崩れていると、菌に侵入をゆるしてしまったり、反応せんでもいい物質にまで過剰反応してしまうこともあります。

この過剰反応に対してなだめ役をしてくれるのが、「Treg(Tレグ)」という細胞なんですが、このTregがちゃんと働いていると、腸内フローラをいい状態に整えてくれます。
逆に、腸内フローラの状態がいいと、Tregをちゃんと働かせてくれる。
その架け橋となるのが、どの腸内細菌を腸に住ませるべきかどうかを判断する免疫グロブリンA(IgA)というわけ。

これ、まさに前回わたしが「わかりにくいことこの上ない」と不平不満を垂れ流したこの論文に書いていることそのままやったわ。
Foxp3陽性T細胞,腸管の免疫グロブリンA,腸内フローラのあいだにみられる相互制御

たいへん申し訳ございませんでした。

Treg、IgAについては、下の方でもう少し詳しく見ていきましょう。

ここで言いたかったのは、「腸内フローラバランスをちゃんと整えておくと、バリアにもなるし、免疫寛容もちゃんと働くし、おすすめ!」ってことでした。

物理的・化学的バリア

前回載せた図をおさらい。

腸管免疫

青の下の方にある粘液層、ピンクのつぶつぶのやつ(腸管上皮細胞)が物理的に外敵をブロックしてくれています。

積み上げた石のように。

石を積み上げただけでは、水攻めや毒ガスに対応できないじゃないかって?
よくぞ聞いてくれました。(さっきから一人で喋ってるで)

腸の壁には、「タイトジャンクション」というのが存在し、石と石のあいだを、まるでレンガを積むときのあいだのやつみたいな感じで(名前わからへん)、しっかりと侵入を防いでくれています。

最高。
タイトジャンクションって名前もかっこいいし。

ぬめぬめの部分と、しっかり詰まった細胞があれば十分なような気もしますが、じつは小腸では粘液層が薄く、ぬめぬめ効果があまり期待できないんですね。(世の中そう甘くはないんです)

そのかわりと言ってはなんですが、小腸特有のパネート細胞っていうのがあって、そこから抗菌ペプチドが出ておりまして、それでバリア機能が保たれています。

リンパ球たち(T細胞、B細胞)

リンパ球

いよいよ本丸!

今後、同じ外敵にすぐに対応できるようにしたり、本当はブロックしないでいいものかどうかを判断したりするために、「一時取り込み機能」があることは前回お話しました。
小腸の最後の方にある「回腸(かいちょう)」に存在する「M細胞」が外敵と思われる人物を取り込み、白血球(リンパ球)たちにお知らせします。

そこで、素手攻撃、武器攻撃、言葉攻め、メモリーなど、様々な免疫機能のスイッチがONされるわけですが(免疫応答)、これらは実に微妙なバランスを保って、チームで活躍しているんですね。

B細胞によるIgA作り

みなさん、IgAって覚えてますか?
腸管にたくさんいて、細菌の感染を防ぐと同時に、有益な腸内細菌を粘液下に誘導する役割も果たしている、門番的な子です。

免疫グロブリンってなんやねんって方は、大変お手数をかけて恐縮ですが、こちらの記事を再読してください。

男子のケンカ(細胞性免疫)と女子のケンカ(液性免疫)【腸と免疫シリーズ5】

このIgA、主に腸管免疫において重要なんです。

小腸下部にあるM細胞の下に、パイエル板っていうところがあります。

そう、ピアノを習ったことのある方にはお馴染み……ってそれ、「バイエル」やわ。

カリッと小気味よい音に続き、口の中に広がる肉汁……ってそれ、「アルトバイエルン」やわ。

話を戻しましょうね。
このパイエル板やリンパ節の中で、いろいろあって、IgAが生み出されます。

病原菌に感染していない状態でも、抗体であるIgAがたくさん作られるのは長年の謎でしたが、最近になって「自分に有益な腸内細菌を選ぶため」ということがわかってきました。
ちなみに無菌マウスにはIgAがあまりなく、腸内細菌とIgAの深い関わりがここでも示唆されています。

Th1細胞とTh2細胞のバランス

T細胞には、いろいろ種類があります。

「たけし(Takeshi)」、「たかひろ(Takahiro)」、「たくや(Takuya)」とかにしてくれたらいいのに、Th1とかTh2とかTregとか、わかりにくいですよね。(頭文字がぜんぶTの名前でもたいがいわかりにくいわ)

Th1細胞というのは、マクロファージや細胞傷害性T細胞を活性化して、ウイルスや細菌の排除に働きます。
マクロファージ?
細胞傷害性T細胞?
ってなった方は、こちらを読み返してみてください。

自然免疫でパトロールして、獲得免疫でいざ出陣【腸と免疫シリーズ4】

このTh1細胞が過剰に働きすぎると、自己免疫疾患につながると言われています。

一方で、Th2細胞というのは、B細胞を活性化して抗体(免疫グロブリン)を出す、液性免疫にかかわる細胞です。
これが過剰になると、アレルギーの発症につながるのではと言われています。
赤ちゃんや無菌マウスは、Th2に偏ったバランスが多く見られるそうです。

Treg(制御性T細胞)による免疫寛容

自己免疫疾患、あるいはアレルギーなど、免疫が過剰に働きすぎている場合に活躍してくれるのが、「Treg(制御性T細胞)」です。
攻撃的になっている免疫細胞たちに、「大丈夫やから。その子、そんなに悪い子じゃないから。優しくしてあげて。ね?」と言って回ってくれます。

外からの異物(食べ物)にさらされている消化管には、とくにTregがたくさんいます。
人間の身体は、とにかく自分ではないものは攻撃しようとしますから、「それは大切な栄養であって、敵ではないよ」と教えてあげる必要があるからです。

このTreg、腸内細菌とものすごく密接に関わっているんです。

  • 無菌マウスにはTregが少ない
  • 特定のクロストリジウム属の腸内細菌には、Treg誘導作用がある
  • 炎症性腸疾患やアトピー患者には、上記のクロストリジウム属が少ない
  • 腸内細菌が食物繊維を分解することでできる酪酸・プロピオン酸にはTregを増やす作用がある

ざっくり言うと、こんな感じです。

この他にも、Th17細胞による感染防御をはじめとして、たくさんのT細胞が細かい微調整をしながらがんばってくれています。

T細胞はもともとぜんぶTh0という細胞だった

この記事を書くにあたり、わけがわからないのですっ飛ばしていた項目があります。

それが、「ナイーブT細胞から様々なサブセットへの分化」です。

T細胞分化サブセット
Tumor-induced perturbations of cytokines and immune cell networksより画像引用

とにかくここで確認しておくべきは、「Th1もTh2もTh17もTregも、ぜーんぶTh0からはじまったんだ!」ということ。

Th0が生卵やとすると、Th1がだし巻き卵、Th2がゆで卵、Th17が卵かけご飯、Tregがプリンって感じやな。

矢印のうえに「IL」と冠のついた数字がたくさん並んでいますが、「インターロイキン」のことです。
これは細胞と細胞のコミュニケーション、指示書みたいな役割と思えばいいんでしょうか。ねえ、どうなんでしょうか。

Th0という素材である生卵に、かき混ぜるとか熱を加えるとか、そのままご飯にのっけようぜとか、砂糖を入れるとか、いろいろ指示が飛んでくるわけです。
結果として、いろいろな働きを持った細胞になるというわけ。

ちなみに、腸内フローラ移植(便移植)のドナー選定には、この図に載っていることが重要らしく、検査でめちゃくちゃ見られます。

こんなふうに、実に複雑で繊細な仕組みで、腸管免疫はできています。

この免疫シリーズのもっとも重いパートが、終わったわけです。
最高の気分です。
まだ16:30ですが、ワインでも飲みたい気分です。

このあとは2,3本、編集後記的な免疫のお話を書きますので、気長にお待ちください。

【前回までの免疫シリーズ目次】
免疫力が大切っていうけど、そもそも何なん?【腸と免疫シリーズ1】
免疫の異常と疾患のものすごく深い関係【腸と免疫シリーズ2】
四段構えで身体を守ったり保ったり【腸と免疫シリーズ3】
自然免疫でパトロールして、獲得免疫でいざ出陣【腸と免疫シリーズ4】
男子のケンカ(細胞性免疫)と女子のケンカ(液性免疫)【腸と免疫シリーズ5】
免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ6】

▼次の免疫シリーズの記事▼
不定愁訴の原因は「経口免疫寛容」にあるかもしれん【腸と免疫シリーズ8】

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腸内フローラ移植(便微生物移植)を知っていますか?
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