免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ6】
いつのまにか6月になっていますが、恒例の「余裕のあるときにまったり更新! 免疫シリーズ」をお送りします。(更新のスタンスを勝手に変えるな)
ちなみに今日は、まったく余裕はありません。
ここでいう「余裕」というのは、「現実逃避」という意味合いも含まれます。

ところで、免疫免疫とゆうてますが、腸には免疫細胞の7割が集中しています。
白血球の一種であるリンパ球が、10の11乗も存在すると言われています。
わたしたちの身体の中で、外気にさらされている皮膚は、固い皮でおおわれています。
でも、外から入ってくる食べ物と直接触れ合う消化管は、柔らかい、無防備な状態といっていいような皮しかありません。
その理由は、消化管の役割にありました。
目次
消化管、そして腸の役割

食べたものは、まず口でモグモグされ、唾液に含まれる消化酵素と一緒に食道を通過し、胃に到着します。
そして、胃、十二指腸、小腸とすすむにつれ、食べたものはどんどん小さな分子へ、吸収されやすい状態へと変化していきます。
ここまでは、「食べたものを、とりあえずは受け入れましょうか」というスタンスです。
「合コンで出会った男性には、とりあえず連絡先を教えといて、全員とデートしとこか」ってなもんです。(合コンに行ったことすらないくせに)
そして、小腸に到着してようやく、「小さな分子になった栄養分の吸収」がはじまります。
「たかしクンと、山崎クンは、とりあえず合格かな」という判断が下され、消化管のカベを通って身体の中に吸収されていきます。
大腸では、主に水分の吸収が行われます。
「大島くんも、おいしいフレンチをごちそうしてくれるし、キープかな」ってなもんです。
そして、せっかく消化管の旅を続けてきたものの、不要と判断された「食べ物のカス」は、うんちの一部として排泄されていきます。
「あとの3人は、ポイだな。LINEブロックしちゃえ」と、捨てられます。(まじでこんなやつ、罰当たればええねん)
ちょっと私的な感情も入りましたが、腸はとにかく出会いの数を増やせばいい上部消化管と違い、「吸収」「排泄」「解毒」などの重要な役割を担っているのです。
つまり、外部から入ってくるのが異物なのか、それとも生命維持に欠かせない栄養分なのかを判断する、「最後の砦」というわけ。
腸に7割の免疫細胞が集中しているのも、うなずけますね。
腸管免疫のしくみ
免疫シリーズ3では、身体を守る仕組みには4種類ありますという話をしました。
体全体の免疫と同様、腸管免疫にもいくつか種類があるみたいなんです。
種類というか、チーム構成員というか。
ものすごおおおおおく、ざっくりと紹介しましょうね。(曖昧な知識をなんとか隠したいという君の希望が見え隠れするね)
まず、百聞は一見にしかず。
図を見ましょうね。
画像引用:Foxp3陽性T細胞,腸管の免疫グロブリンA,腸内フローラのあいだにみられる相互制御
これ、▲この論文▲[1]Foxp3陽性T細胞,腸管の免疫グロブリンA,腸内フローラのあいだにみられる相互制御 : ライフサイエンス 新着論文レビューからお借りしてきたんですが、わかりにくいですよね。(勝手にお借りしといて、何たる言い様)
Foxp3陽性T細胞ってなに? キツネ? って感じですよね。(そのFoxちゃう)
どうやら、我々がTregと呼んでいる、免疫を穏やかにする細胞のことらしく、それとIgA、腸内フローラの関連性を書いた論文のようです。
……なにそれ、めっちゃおもしろそうやん!
当研究所とむちゃくちゃ関係ありますやん!
なんでもっとアホ向けの表現で書いてくださらないんだろう。。。
でも、「腸管免疫 図」でググってみてください。
これ以上にわかりやすい図って、残念ながらないと思います。
つまり、「腸管免疫」というカテゴリーそのものが、ものすごくわかりにくく、難しいと言えるのでは。
この図、とくに理解していただく必要はないです。
ざっくり、「青いところが空洞のところで、ピンク並んでるところがゲート的な感じで、黄色のところがマジの体内」ぐらいのイメージで十分。
というか、わたしはそのイメージまでしか到達していません。(なぜお前が腸管免疫を解説しているんだ)
免疫の7割を担当する腸が、外部の異物から、どんなふうに身体を守っているのか。
見ていきましょう。
微生物学的バリア

まず、図の青い部分ね。
腸管の中にいる100兆以上の腸内細菌たちが、第一関門です。
外部から、見知らぬ細菌やウイルスなどが混入すると、もともと平穏に暮らしていた腸内細菌たちはざわつきだします。
そして、身体にとって有害だと判断すると、さっさとうんちにして出ていってもらおうとします。
「あのー、すいませんけど、今日はあいにく満室なんです。他をあたってください」
「悪いことはいいません。この人の腸、結構住みにくいですよ。やめておかれたほうが……」
「おうおう! おめえ、どこ中のもんだ? 誰の許可とって、ここにタムロってんだよお」
「え、あの子だれー? いつメン(いつものメンツ)じゃないよねえ。うざくない? ね、シカトしない?」
こんな感じで、おのおの自分なりのやり方で出ていってもらうんですね。(最後のやつ陰湿やな)
良くも悪くも、腸内細菌たちの構成を変えるのは簡単なことではありません。
物理的・化学的バリア

次に侵入者を待ち構えるのが、何重にも閉じられたゲート。
まず、図の青い部分の下の方には、ぬめぬめの液体があります。
これを「粘液層」と呼んだりしますが、細菌たちにとってはスライムの壁に突入していくような感じです。
めちゃくちゃ動きにくそう。
その下に、「腸管上皮細胞(図で言うピンク)」があって、これも石を積み上げたようなバリアになってくれています。
この他に、抗菌ペプチドと呼ばれる分泌物が化学的なバリアになってくれます。
リンパ球たち(T細胞、B細胞)

いくら強固なバリアとは言え、ずっとゲートを閉じて立てこもっているわけにもいかないわけです。
相当に悪いスパイとかがいたとしたら、尋問しなくてはなりません。
逆に、完全鎖国状態にしてしまうと、本来は栄養として取り込むべきものまで排除してしまうことにもなりかねません。
そういうわけで、免疫は外敵を「一旦取り込んでみる」という機能も備えています。
人間の身体のしくみ作った人(ってゆうか神様っていうか)、まじすごすぎ。
この「一時取り込み機能」は、小腸の最後の方にある「回腸(かいちょう)」に存在する「M細胞」が担当しています。
取り込んだ後は、例の獲得免疫の流れに沿っていく。
このそれぞれのバリアについて、次回の記事でもう少し掘り下げていきましょう。
▼次の免疫シリーズの記事▼
《もっと詳しい》免疫の要、腸管免疫のしくみ【腸と免疫シリーズ7】
【これまでの免疫シリーズ目次】
免疫力が大切っていうけど、そもそも何なん?【腸と免疫シリーズ1】
免疫の異常と疾患のものすごく深い関係【腸と免疫シリーズ2】
四段構えで身体を守ったり保ったり【腸と免疫シリーズ3】
自然免疫でパトロールして、獲得免疫でいざ出陣【腸と免疫シリーズ4】
男子のケンカ(細胞性免疫)と女子のケンカ(液性免疫)【腸と免疫シリーズ5】
この記事を書いた人

- 研究員(菌作家)
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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
個人ブログ→千のえんぴつ
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