【後編】若々しさも病気知らずも長寿も、DNA修復力(と有機酸)にかかっている!
みなさん。たった今ウンコをしてきました。
今日も元気なウンコでした。(お昼ご飯を今から食べる人、ごめん)
前回は、病気の原因になるDNAの損傷と、その修復についてお話しました。
DNAの修復方法は実に複雑で、多岐にわたっています。
詳しく知りたい人は、DNA修復 – Wikipediaを見てみてください。
詳しく書かれすぎていて、Wikipediaに足向けて寝られへんわ。(アメリカ方面かな)
実は、腸内細菌が出してくれる有機酸が、DNAの修復に役立っていることがわかってきました。
目次
有機酸(短鎖脂肪酸)が長寿のカギ!
わたしたちの健康を保ってくれる物質である「有機酸」の中には、長さの短い「短鎖脂肪酸」というものがあります。
例を挙げると、酪酸、酢酸、プロピオン酸などです。
この有機酸、DNA修復速度を上昇させてくれていたんです。
具体的には例えば、DNAポリメラーゼという、新しいDNAを作る酵素の活性化などがありますが、特に医療関連のテストが控えている人以外は別に覚えなくて大丈夫です。
わたしも多分、明日には忘れてる。
車で道路走ってても、「あれ、この標識なんやったっけ。まあいいか」ってなること結構あるしな。(誰かこいつから免許剥奪して)
ちなみに、短鎖脂肪酸の中でも特に酪酸という物質は、免疫の暴走を抑えてくれるTreg細胞を作ってくれたり、ガン細胞だけを天国に導いてくれたりするかもしれんということで、
いま大変注目されています。
(参考:腸内細菌の産生する酪酸による制御性T細胞の分化の誘導)
「酪酸を産み出す菌」は、ご長寿のお腹にたくさんいることも研究でわかってきています。
有機酸を増やすにはどうしたらいい?
では、手っ取り早く有機酸を増やす方法はあるんでしょうか?
例えば、有機酸のひとつである酢酸。
これは呼んで字のごとく、「お酢」のような成分なんですが、ダイエット効果があるとして注目されています。
ではお酢を飲めば、効果的なのか?
これ、意外なんですが「一時的だが効果はある」そうです。
同じように、他の有機酸もサプリメントにして摂ってしまえばいいのでは? と考える人は現れます。
でも残念ながら、効果はあくまでも一時的なんです。
なぜかというと、酸は体内に入るとすぐに分解されてしまって、使われてしまうからです。
めっちゃ浪費家の彼女に、一生懸命貢ぎ続ける男、みたいな残念な感じです。
切らさずに飲み続けるから、一時的でも効果があればいいというなら、止めはしません。
ちなみにお酢を飲むというのは、腸内環境を理想的なpH(弱酸性)にするお手伝い効果もあるので、飲んでみてください。
感情があふれるのは体のどこかに不調があるサインかもしれない、という話を前回の記事で書きましたが、
体内で有機酸がたくさん分泌されるには、泣くのが一番手っ取り早いので、身体がわたしたちにそうさせてくれているということです。
有機酸を作る生活については、以前こんな記事を書きました。
有機酸産生菌の存在
酸がすぐに分解されてしまうなら、1日に何回も何回もサプリメントを飲めばいいのかもしれません。
そうすれば、サプリメントの会社が喜びます。
でも、もっとラクでお金のかからない方法を皆さんにお伝えします。
それは、有機酸を出してくれる腸内細菌を育むということ。
つまりどういうことか?
腸内細菌たちは、わたしたちの腸に住んでくれているあいだにずっと有機酸を出し続けてくれて、しかも自分たちで世代交代して働いてくれるんです。
これ、人間社会で言ったらありえないほど理想的な存在ですよ。
一回種を撒いといたら、一切世話をしなくても毎年1億円実らせてくれる木のようなもんです。
いや、健康はお金では買えないので、もっと貴重ですね。
ちなみに腸内細菌は有機酸だけではなく、身体の中ですぐに使える水素もたくさん出してくれます。
前回のおさらいですが、DNAの損傷とは、塩基の酸化のことでもありました。
酸化を還元して正常な状態に戻すのに水素が有効なことは、よ〜く知られています。
さらにさらに、細菌たちは身体が小さいおかげで人間よりも進化のスピードが早いのです。
これはつまり、急激な生活環境の変化に追いつけない人間の遺伝子を、腸内細菌たちが補助してくれているということ。
まとめます。
- 有機酸(酪酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸など)をずっと作ってくれる
- 身体の中で水素を作って、酸化(損傷)を直してくれる
- 人間が追いつかない進化のスピードを補助してくれる
どう?
愛おしくて、ありがたくて、腸内細菌にキスしたくなりませんか?(人間のくちびる1個で、一気に5億匹ぐらいキスできそう)
ちなみに、腸内細菌がこんなふうに素晴らしい働きをしてくれるためには、彼らが住みやすい環境を整えてあげなくてはいけません。
そうでないと、ちょっとしかいなくていい菌が増えすぎたり、良い菌は存在しているけどみんなサボっている、ということになりかねません。
わたしたちにできることは、なるべくDNAが損傷しないように生きること、そしてなるべくたくさん修復してくれるように腸内細菌を慈しむことです。
腸内フローラ移植したからって言って、自堕落な生活はしないように。(自戒を込めて)
この記事を書いた人

- 研究員(菌作家)
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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
個人ブログ→千のえんぴつ
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