臓器同士は通信している!【その1】(腸内細菌が司令塔?)編

わたしたちが社会生活を送る上で欠かせないことのひとつに、「通信」があります。
「通信」とは、英語で「コミュニケーション」です。
誰かと何らかの意思疎通を図ろうとすれば、原則的には相手の目を見て言葉を交わすしかありません。
けれど、手紙、電報、電話、インターネットの普及で、通信手段は飛躍的に発達しました。
いつでもどこでも、ネット環境さえあれば、思い立ったときにベネズエラの彼氏とビデオ電話ができてしまうんですから、大したものです。(ベネズエラに知り合いすらおらんやろ)
では、通信手段が発達したおかげでわたしたちのコミュニケーションは円滑に進むようになったのか?
わたしの個人的な意見を言わせてもらうと、コミュニケーションはかなりカオス状態に陥っている気がします。
文字や映像からは捉えきれない、微妙な間合いや声のトーンなど。
そういうところに、「ほんとうに伝えたいこと」があると思うのです。
それにもかかわらず、とにかくLINE一本打っておけば伝えたつもりでいることってありません?
情報や気持ちは、相手に伝わってこそ初めて「伝えた」ということになります。
既読がついただけで伝えた気になっていると、痛い目に遭います。
伝える側と受け取る側、両方が一生懸命コミュニケーションに参加することで、初めて「通信」は成り立つと思うのです。
そんな、わたしたちが忘れがちなことを、腸内細菌が教えてくれました。
それでは早速、腸内細菌を中心に、全身の臓器・組織がどのように「通信」しているかを見ていきましょう。
目次
脳と通信:脳腸相関

これはわりと有名ですね。
腸と脳がつながっているんです、という話。
もう少し詳しく書くと、腸と脳は双方向のネットワークで繋がっていて(1億本の腸管神経系)、お互いに影響しあっているということです。
例えば、わたしはストレスがかかると便秘になります。
この場合の「ストレス」にはいろいろな種類があります。
・朝7時の新幹線に乗らなアカンから、急いで準備せな!
という「ドタバタ系ストレス」。
・今日は洗濯して掃除機して風呂の掃除してトイレも掃除して、料理も2日分して打ち合わせが2件あって、うーわ資料作成終わってないわ。
という「いっぱいいっぱい系ストレス」。
・なんでデータ消えてるん!? しかも頼んだ仕事やってくれてないし。もう絶対間に合わへんわ。最悪。しかもドアで小指打ったわ。ボールペンのインクないし!!(怒)
という「負のループ系ストレス」。
・こんなことして何になるん? 結局人間、最後はみんな死ぬわけやんかあ。もうやめへん?
という「太宰治系ストレス」。
などなど。
他にも、外食が続いたり、寒かったり、旅行先でも便秘になります。
逆に、ストレスで下痢になる人もいるでしょう。(やべぇ、センター試験なのにユルいわ。普段なんともないのに)
脳で感じるストレスが腸の不快感につながることがある一方、
腸の状態がいいと精神的な落ち着きや、やる気の向上につながることも多々あります。
実はここでいう「腸の状態」とは、「腸内細菌(腸内フローラ)の状態」と言い換えることもできます。
腸内細菌たちは、例えば神経伝達物質のひとつであるセロトニンの材料をたくさん作ってくれています。
腸内フローラバランスが、神経伝達物質の生成を調節し、性格や気分を左右していると言っても過言ではないのです。
このことは、臆病マウスと活発マウスの性格入れ替え実験でも明らかにされています。
- わけもなく気分が落ち込む
- ときどき気分が高揚して後先考えずに無理をしてしまう
- 気を遣いすぎて疲れる
- やる気が出ない
- すぐにイライラする
など、自分でもどうしようもないくらい感情に振り回されるのは、腸内フローラバランスに原因があるかもしれません。
腎臓と通信:腸腎連関

実は、腸と通信しているのは脳だけではないことがわかってきました。
例えばこちらの記事。
「腸腎連関」:腸内細菌叢のバランス制御が慢性腎臓病悪化抑制のカギ ‐腸内細菌叢は腎臓病に対して良い面と悪い面の二面性を持つ –
ここでは、腸内細菌がいないと腎臓病が悪化する一方、ある腸内細菌が出す尿毒素が腎臓病を悪化させると報告されています。
ちなみに、腎臓が弱ると、心臓も弱るというのはよく言われることだそうです。(こないだ祖母の七回忌のとき、お坊さんが教えてくれた)
この相関関係は詳しくはわかっていませんが、臓器間の通信を信じているシンバイオシスでは、このように考えています。
- 腎臓が弱る
- 血液をろ過して尿にする機能がうまく働かなくなる
- 心臓が送り出す血液量(血圧)に腎臓がついていけない
- 心臓は空気を読んでポンプ機能を控えめにしてくれる or 自分ひとりだけ頑張っている状況に対して燃え尽き症候群に陥る
※あくまでひとつの学説の段階です
ここで心臓が空気を読んでくれるかどうかは、ひとえに臓器間の通信力をいかに持っているかということにかかってきます。
腸と全身、臓器同士の通信

ほかにも、子宮と腸が通信していることで、生理前後で便秘や下痢になる事も知られていますし、
骨や筋肉までもが通信しているのではないかと言われています。
これまで脳からの一方通行の指令だと思われていた各臓器・組織のあり方が見直されてきています。
その場その場に合った適切で無駄のない発信と、体全体の負担の軽減や組織の修復のための受信。
人間同士の通信よりも、よっぽど高度ですね。
医療業界は国と同じくらい変化が遅いので、統合医療という言葉すらまだ浸透していない感じがあります。
でも、部分だけを見てきた医療は、近い将来間違いなく見直しを迫られます。
高血圧になっているのには、そうならざるを得ないだけの理由が身体の中にあります。
それを無視して、血圧降下薬だけ飲んですべて解決するなんて、思い上がりもいいところですよね。
その通信の中心、司令塔にいたのは、実は腸内細菌ではないかということがわかってきています。
長くなってきたので、記事を分けます。
次回は、「あなたの有機酸足りてる?」編です。(明後日更新予定)
この記事を書いた人

- 研究員・広報(菌作家)
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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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腸内フローラ移植
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シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)