1982年から続けてきた微生物の基礎研究や医療機関における臨床を経て、独自の腸内フローラ移植(便移植)方法を開発しました。微生物たちとの共存共栄には、無限の可能性があると信じています。
シンバイオシス研究所 -微生物との共存共栄-
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【後編】自分の細胞と闘う?共存する?(腸内細菌とがん免疫療法)

免疫チェックポイント

前回の記事でお話したのは、
身体の免疫システムは、自分の細胞ががんにならないようにめっちゃ頑張っているんだ! ということと、
がんになってしまうと、がん細胞が免疫システムを騙しておだてて、攻撃させなくしてしまうんだ! ということでした。

https://shinbiosis.com/intestine-flora/cancer/

今日は、がんに対抗するために開発された薬のお話と、
腸内細菌のことを思いやって生活すればがんを回避できるかもしれないというお話をします。

免疫を強化すればがんを撃退できる?

免疫強化

がんになったら、まず3大標準治療というのが選択肢として存在します。
外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)です。

いずれも「がんを消失・小さくする」という点において効果が認められたものばかりです。
肉体的・精神的な負担は大きいものの、保険が適用されるため、まずはこの3つの方法を選択される方がほとんどです。

それに加えて、第4の治療法として注目されているのが、免疫療法です。
がんと免疫システムの関係には、古くから注目が集まってきました。

従来の免疫療法は、「免疫力(攻撃力)を上げよう」というコンセプトのものが多く、
とにかく攻撃力をあげるものから、がんだけを狙うものまで様々ありました。
けれど、効果については疑問が残っていました。

その理由は、前回の記事で触れたように、
T細胞の好みを熟知していたり、オカンを取り込んでしまうから。
攻撃力をいくら上げても、そもそも攻撃対象になってくれないのです。

免疫療法に新風! 免疫チェックポイント阻害剤の登場

効果が疑問視されていた免疫療法に新しい風を吹き込んだのが、「免疫チェックポイント阻害剤」です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、例えばあの「オプジーボ」のことです。

この「免疫チェックポイント」というのは、「好みを熟知して免疫細胞を無力化」のことです。

それを阻害するというわけですので、
貢ぎ物にウハウハしているT細胞に「喝!」を入れて、またがんを攻撃できるようにしてくれます。
オカンも退場させてくれます。

免疫チェックポイント阻害剤
※図の茶色い矢

厳密には、がん細胞の差し出す手や、T細胞の受け取る手に「免疫チェックポイント阻害剤」がくっついて、手をつなげなくしてしまいます。

このあたりについて、下記のサイトがむちゃくちゃわかりやすく書いてくれています。
免疫療法について解説したマンガ「免疫のシゴト」公開 – がん情報サイト「オンコロ」
わたしにも絵心があれば……

もっと詳しく知りたい方は、こちらもわかりやすかったです。
免疫チェックポイント阻害薬|いちから学ぶ がんと免疫|がん免疫療法|がん免疫.jp Immuno-Oncology

この免疫チェックポイント阻害剤、彗星のごとく現れた救世主として注目されています。
ノーベル賞を獲ったテーマなので、記憶に新しい人も多いでしょう。

もちろん、まだまだ課題は盛り沢山です。

価格が高いことに加えて、効果が確認されたがんの種類も限定されています。
さらに、免疫の暴走を止めていたブレーキを強制的に解除するので、自分の細胞も攻撃してしまうような副作用も確認されています。

こういった新薬の開発にも期待が高まりますが、
今から5年10年後にもっとがんが増えることを見越して、DNA修復〜がんの芽の段階でなんとか食い止められるようにすることが大切です。

腸内細菌とがんとの深い関係

がん

さて、ようやく本題です。
腸内細菌が健康に関わっていることがわかってきて、がんと腸内細菌の関係も次々に明らかになってきています。

がんを予防する菌、がんを引き起こす菌

みなさん、「エクオール」という名前を聞いたことはありますか?
美容に関心の高い女性は、聞いたことがあるかもしれません。

以前、このブログでもエクオールについて触れたことがあります。

アトピー患者にとって、エクオール産生株の腸内細菌がいかに大事かという話。

エクオールとは、腸内細菌が出してくれるイソフラボンのような物質です。
このエクオールが、前立腺がんや乳がんを予防してくれるかもしれないという研究が進んでいます。

一方で、「アリアケ菌」と呼ばれる細菌ががんを引き起こす可能性についても報告があります。

腸内細菌が免疫チェックポイント阻害剤の効果を左右する

免疫チェックポイント阻害剤

患者さんによって治療法を変える「個別化医療」が進んでいますが、免疫チェックポイント阻害剤はその代表例です。
つまり、「劇的に効く人もいれば、全然効かへん人もいる」ということ。

その要因のひとつに、腸内フローラの状態が関係していることがわかりました。(キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)

Gut microbiome influences efficacy of PD-1–based immunotherapy against epithelial tumors | Science

ざっくり言いますと、アッカーマンシア・ムシニフィラという菌がいる人のほうが、免疫チェックポイント阻害剤は効きやすいという結果が出たそうです。

乳酸菌にNK活性を高める効果があるという報告もされています。

ただ。
ただ!!!

我々シンバイオシスは、特定の菌だけががんを引き起こしたり、治療効果を左右するとは考えていません。
むしろ、そのバランスや多様性が大切です。

腸内フローラの多様性が免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を高めるという論文、
抗菌薬の使用が治療効果を減じるという論文もあるので、まったく根拠のない話をしているわけではありません。
Gut microbiome modulates response to anti–PD-1 immunotherapy in melanoma patients

ちなみに、腸内細菌の出す有機酸が、がんのもとになるDNAの損傷を修復してくれるという話も以前ブログでしました。
腸内細菌をいい状態に保つのって、何につけても大事なんですね。

わたしの腸内フローラ、だいぶ酷使してるけど大丈夫なんかな?(なによりもまず労って)

腸内細菌とがん免疫療法のこれから

がん免疫療法

腸内細菌の状態、つまり腸内フローラを整えることで、がんを予防したり、がんになってしまっても希望が見えやすいことはわかりました。

でも、腸内フローラを整えるだけでがんが治るのかという話になると、まだまだです。
がんの急速な増殖スピードに、腸内細菌の頑張りが間に合わないんです。

では、がんの末期に腸内フローラのケアや、腸内フローラ移植は意味がないんでしょうか?

まあ立場上、意味がないとは言いづらいんですが、正直言ってそれだけでステージⅣbの人がみるみる完治しました!
という例は見たことがありません。

むしろ、標準療法のつらい副作用を緩和したり、もう手の打ちようがないと言われた方の最期の時間を少しでも穏やかなものにするために、腸内フローラ移植をしてきました。

だから、これだけは言わせて。

みんな、もっと早く来て!!!!!

最後の選択肢としてではなく、希望と余裕のある選択肢として腸内フローラ移植を選んでほしい。
遅れれば遅れるほど、身体に負担のかかる方法を選ばざるを得なくなるから。

ちなみに、これは最近多くのがん患者さんの腸内フローラを見て思ったことですが、
ステージが進むとむしろ腸内フローラ的には免疫過剰の人が多い

前回も言ったように、がんになるとむしろ免疫は弱る方向に働くのに。
これは、腸内細菌たちがなんとかがんに対抗しようとしてくれているんだと思います。
(これはまだ仮説ですが、腸内細菌の出す物質が免疫チェックポイント阻害剤のような働きをしている可能性も)

ある特定の腸内細菌ががんの原因になるとか、
腸疾患や自閉症の原因になるという類の論文を見かけることがあります。

でもこれ、ちょっと違うと思うんです。
人間の身体のダメージを最小限に留めるために、特定の細菌が増えたり、バランスが崩れたりしているんだと思うんです。

だって、腸内細菌にとっては人間の身体が住処であり、そこに住んでいれば食べ物ももらえるのに、
わざわざ宿主の健康を損なうことをすると思いますか?

わたしたちにできることは、腸内細菌が「やむを得ず」崩れたり、変なバランスにならなくても、
のびのびと本来の働きができるような暮らし方をしてやることではないでしょうか。

と、これだけ大きいことを言ったあとで、今日の仕事中に食べたおやつの量を思い出してブルーになりました。

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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。 でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。 いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。 ご挨拶と自己紹介も併せてご覧ください。
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健康な人の腸内フローラを移植することで、ふたたび健康を取り戻そうという治療法に期待が高まっています。
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