人工甘味料で下痢になる人に足りない腸内細菌を発見

ちひろです。

人工甘味料。
市販のお菓子や飲み物にはもちろん、お惣菜や調味料などありとあらゆるところに登場する彼らは、もはや避けて通るのが難しいものたちです。

彼らは低カロリーなんです。ほんの少しで、砂糖に比べてめちゃくちゃ甘くなるし。
しかもコストが安いので、食品メーカーは喜んで使っています。
まずいんですけどね、人工甘味料。舌が馴れてしまうと、低カロリーであるというマジックで味が気にならなくなるのかもしれません。

でもこの人工甘味料、むちゃくちゃ身体に悪いことはみなさんご存知のとおり。

人工甘味料の摂取による下痢を防ぐ腸内細菌

多くの人はなんの問題もなく人工甘味料を摂取していると思うんですが、たまに人工甘味料の摂取で下痢になる人たちがいます。

だいたいのケースは他の身体に悪いもん系とセットで入ってるので、人工甘味料だけで摂取できる機会ってあんまりないんですが、出来合いのものやジュース、甘い缶コーヒーなんかでお腹壊すケースなら、そうかもしれません。

慶應義塾大学の研究グループが、腸菌細菌が人工甘味料の過剰摂取によって引き起こされる下痢を防ぐことを、マウス実験により発見しました。[1] … Continue reading[2]Nutrients | Free Full-Text | Gut Microbiota Prevents Sugar Alcohol-Induced Diarrhea | HTML

詳しくはこちらの全文プレスリリースを読んでください。むっちゃよくまとまってて、わかりやすいです。
以下、一部抜粋します。

本研究では、腸内細菌の全くいない無菌マウスや、抗生剤で腸内細菌叢を撹乱させたマウスを使用することにより、腸内細菌が糖アルコール誘発性の下痢を防ぐ重要な因子であることを見出しました。また、糖アルコール誘発性の下痢を発症しないマウスではEnterobacteriales目またはClostridiales目細菌群が腸内に多いことや、糖アルコールの投与により、腸内でEnterobacteriales目細菌群が増加することが分かりました。そこで、Enterobacteriales目細菌群の中で、糖アルコール誘発性の下痢を抑制する腸内細菌を探索したところ、糖アルコールを栄養源として利用できるEscherichia coli(E. coli;大腸菌)に、糖アルコール誘発性の下痢を抑制する効果があることを発見しました。実際に、遺伝子を変異させることにより、糖アルコールを栄養源として利用できなくした大腸菌は、糖アルコール誘発性の下痢を抑制できませんでした。

腸菌細菌が人工甘味料の過剰摂取によって引き起こされる下痢を防ぐことを発見-「人工甘味料消費細菌」のプロバイオティクス利用に期待-:[慶應義塾]

これはなかなか斬新な研究だと思います。
人工甘味料によって腸内細菌がどのように悪影響を受けるのか、または人工甘味料を多く摂取しているとどんな菌が増えるのかという研究はあれど、
人工甘味料による下痢の有無と腸内細菌の構成に注目した研究は非常に面白いと思いました。

E. coliは悪玉菌というイメージがついていた

今回の研究でキーとなったのは、E. coli(大腸菌)です。

E. coliは培養が簡単なため、細菌検査を行う場面で多く使われてきた菌です。

その一部には病原性を持つ株がいたり、
E. coliの属するEnterobacteriales目は高齢者に多いことなどからも、あまりいいイメージは持たれていませんでした。

これはシンバイオシスとしての所感ですが、腸粘液層が薄くなってしまうリーキーガットや、その他「腸内細菌たちが過酷な環境にさらされている」と言える腸内環境において、
最後まで生き残るしぶとい子たちという印象もありました。

そんなE. coliですが、いいところもいっぱいあります。
病原性を持つごく一部の菌以外の菌は、番長のような感じで外敵から宿主を守ってくれる役割があります。

食べたものの代謝を行う菌たちのリレーにも、もちろん参加しています。

今回の研究で明らかになったのは、人工甘味料というある意味「排除すべき外敵」が入ってきたとき、E. coliはよしきたとばかりに張り切って増えてくれること。
そしてソルビトール(人工甘味料)を栄養源として消費してくれることで、宿主は下痢にならずに済んでいました。

E. coliのプロバイオティクス化が期待される

ソルビトールなどの人工甘味料が溢れかえっている今、その影響で下痢などの不快症状を引き起こしている人も増えています。

彼らの腸内にE. coliなどの「ソルビトールを消費してくれる菌」がいない、または適切に増えないことで症状が引き起こされているのなら、E. coliをサプリメント化して補給してやればいいじゃないという考えに自然となるわけです。

そうすれば、「人工甘味料を摂ってもピンピンしている健康な肉体」になれるんじゃないかと。

もちろん、外から借りてきた「雇われ番長」では、自分のもともと持っていたE. coliには及ばないかもしれない。
E. coliだけではなく、Enterobacteriales目やClostridiales目の菌たちが多い腸内環境で下痢が起こりにくかったなら、それらの菌と共同で下痢を防いでいる可能性もある。

でも、下痢を止めたい人にとっては朗報になりうるでしょう。

腸内でE. coliが増える=健康体?

さて、ここでちょっと疑問が湧いてきます。

「もともとE. coliを腸内に持っていて、人工甘味料を摂るとその子たちが増える腸内環境」というのは、果たして目指すべき理想の環境なんでしょうか?

まして、もともとそういう構成の腸内フローラバランスならまだしも、わざわざプロバイオティクスとして外から「整形」してまで、人工甘味料を分解できるようにしてあげる必要があるのでしょうか。

上述したように、E. coliの属するEnterobacteriales目はあまりいいとは言えない腸内環境で増えている子たちです。

「菌は備わる」と繰り返し言っているように、人工甘味料やその他の外敵から宿主を守るために、最後の最後まで戦ってくれている子たちなんです。
もともと健康で、免疫力の高い人ほど、腸内フローラバランスが完全に崩れ去って不調として肉体に現れるまでには時間がかかります。

菌たちが代わりに犠牲になってくれているから。

腸内でE. coliが増えるということは、ある意味で緊急事態です。
いつ地震が来るかもわからないから、2部屋しかない間取りのうち1部屋を非常食ストック部屋にして、その購入費用として給料の半分使ってしまう、みたいなイメージに近いのではないかという印象を持ってしまいます。

人工甘味料で下痢になるのなら、それはある意味で正しい反応なのではないでしょうか。
そのおかげで、わたしたちは「人工甘味料摂るのやめとこ」と思えるんです。

わたしは幼少期ものすごいアレルギー体質でした。
パン、牛乳、卵、なんでも反応していました。アレルギー血液検査、振り切れまくり。

でも家で焼いたパン、パスチャライズ牛乳、農家さんから取り寄せたエエ卵はまったく問題なく食べられました。素材そのものではなく、素材に避けがたく含まれる化学的・人工的なものに反応していただけでした。

当然のごとく家計を圧迫していましたが、それを「なんて正しい体なんだ」と全肯定してくれた母がいました。

この世知辛い世の中を生きていくためには、人工甘味料に強い菌を補給するのも必要なのかもしれません。
でも、人工甘味料を避けて通れるなら、下痢になる正しい自分の身体に感謝して、避けて通るという選択肢もありかもしれません。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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