動物実験と腸内細菌の相性についてのごくあっさりとした検討

お久しぶりです、というかあけましておめでとうございます。
みなさん、元気よく仕事初めされておられますか?

うちはこの年末年始は喪中だったため、例年に比べてびっくりするぐらい楽なお正月でした。

餅つきもなし、おせち料理もなし、新年会もなし、何なら紅白すら見ませんでした。
大掃除もせんかったし。(喪中関係ないで)
年賀状も書かんかったし。(毎年書いてないやん)

今年の抱負は、健康第一です。

思えば去年は、やたら医療費のかかった年でした。
むし歯に始まり、上顎洞炎になったり入れ歯になったり。
眠れなくなって睡眠外来行ってみたり。

まだ29歳やのにこんなにも保険使ってしまってまじで申し訳ない。

健康って、健康なうちはなかなかそのありがたみを意識できませんよね。
日頃、普通に生きているあいだに「うわーあたし生きてる!」とか思わないのと同じで。

さて、今日は腸内細菌界隈で行われる動物実験の意義について考えてみたいと思います。
折しも今年はネズミ年でちゅし。ちゅー。

腸内細菌の研究における動物実験

何らかの新しい治療法が検討されるとき、その効果や安全性を確かめるためにマウスを中心とした動物実験が行われることが往々にしてあります。

マウスなら効果がなくても、なんなら実験の結果死んじゃっても文句は言われへんし、もっと言うとあえて殺して身体の変化を見たりもするらしい。

ほんま人間って、驚くべき傲慢さ。人間に適用する治療やねんから、人間が尊い犠牲になればよくない?
わたし、痛くない人体実験ならやってもいいけど。20・60死に旬って言うし。(今年30歳やん)

動物実験に利用されてしまうマウスは、死ぬ一ヶ月前とかは毎日好物ばっかり食べて、寝転んでスマホいじらせてあげてほしい。
マウスの好物ってやっぱりチーズなんかな?

話がそれましたが、他の多くの研究同様、腸内細菌や便移植に関してもマウス実験が大変多く試みられています。

例えば代表的なのがこんなやつ。

Fecal microbiota transplantation and bacterial consortium transplantation have comparable effects on the re-establishment of mucosal barrier function in mice with intestinal dysbiosis
Microbiology 07 July 2015
(内容)腸内細菌叢の乱れたマウスへの糞便微生物移植による粘膜層の再構築

Transmission of Atherosclerosis Susceptibility with Gut Microbial Transplantation
(内容)近年のTMAOとアテローム性動脈硬化症との関連に関する報告を受け、糞便微生物移植によってアテローム性動脈硬化症が伝染るかどうかのマウス実験。

Germ-free C57BL/6J mice are resistant to high-fat-diet-induced insulin resistance and have altered cholesterol metabolism
The FASEB Journal 19 Aug 2010
(内容)無菌マウスにおける高脂肪食、インスリン抵抗性、コレステロール代謝の働き。腸内細菌を持たないことによる影響。

Microbiota alteration is associated with the development of stress-induced despair behavior
Jonathan Kipnis & Alban Gaultier 07 March 2017

他にも気になる人は、このページにいろいろ論文載せてます。

印象としては、リスクが高かったり、予想される結果に被験者の不利益が含まれる場合にマウスが使われるようです。
細菌の多寡の傾向を見るだけとか、ある程度安全性の担保されているものに関しては、ヒトの臨床研究に進んでいる感じ。

近ごろの動物実験事情

ところで、実は医療分野では、動物実験を避ける動きが強まっているようです。

都会のショッピングセンターとかで見かけるラッシュって石鹸屋さんあるじゃないですか?
大学生になったばっかりのとき、店頭に鬼のように泡がある店があって、何屋さんかなと思って近づいたら突如お姉さんが泡を渡してくれて、めっちゃびびったの覚えてるわ。。。

そのラッシュと、イギリスの消費者団体であるEthical Consumer Research Association(エシカルコンシューマー・リサーチアソシエーション)共同で設立した「Lush Prize」というのが2012年に設立され、動物実験の代替法開発やその廃止に向けた活動を行っています。(参考:代替法の支援 – Lush Prize

倫理的理由

まずこれは古くからある動きですが、「動物かわいそうやん」という理由です。
確かにおっしゃるとおりで、なんで人間は実験体にしたらあかんのに動物はいいん? ってことですよね。

生きていくために必要な分以上に動物を殺してブランドバッグを作る人たちと同じとは言いませんが、確かに黙殺されている感はあります。
動物は文句を言わない。
これが一番の理由でしょう。

科学的理由

これは比較的新しい動きですが、動物実験を他の方法で代替できないかを探る動きです。

試験管の中での試験に加え、皮膚感作試験やコンピュター上での試験など、科学技術の発達のおかげでより正確な予測ができるようになってきました。

加えて、医療の世界が緻密になるにつれ、いくらヒトと遺伝配列が似通っているからとはいえ、生物種が違う動物での実験がどれほど正確なものなのかは以前から疑問視されていました。

実験に使われてきたマウスの性別がオスばかりだったために、実験結果が歪められていたという考察もあります。(参考:オスのマウスばかり使う実験が科学的研究をダメにしている | ギズモード・ジャパン

シンバイオシスの考え方

お腹が空いたので入れただけの画像です

シンバイオシスの考え方というか、わたしの考え方ですが。
(うちの研究員は何でもかんでも「シンバイオシスとしては〜」ということで、責任を三等分しようとするフシがあります)

まず、腸内細菌に限っての話ですが、マウスと人間はだいぶ違っているなという印象があります。

もちろんヒト同士を比較してもぜんぜん違うのですが、例えばアッカーマンシアなど、有益と言われる菌種はマウスのほうが有意に多く存在しているように思われます。

アッカーマンシアが痩せる! とか、
アッカーマンシアは免疫療法の効果を上げる! とか、
そういう研究結果が出るのですが、ドナーを見渡してもアッカーマンシアが検出される人というのはそう頻繁にはいません。

逆にマウス実験をしたときには、高確率で検出されていました。

ヒトで検出される場合、たとえばがんの初期などの遺伝変異が起こっている状態でより多く検出されていたりもします。
これは「遺伝変異を修復するためにアッカーマンシアが緊急事態的に増えて、その緊急事態対応がうまく行った人は免疫療法の効きもよく、バランスが柔軟に変わらなかった人は効きが悪かった」という解釈も可能です。

そうなってくると、一概にアッカーマンシアがいつでも大歓迎の菌ではないという線も出てくるんです。
論文を書いて手柄を立てないとあかんのでしょうけど、特定の菌と臨床的意義を結びつけるのが短絡的すぎる。そう思ってしまいます。

他にもマウスにはラクトバチルスという、いわゆる乳酸菌群がめっちゃいます。
乳酸菌なんてなんぼおっても邪魔にならへんわと思うかも知れませんが、4割が乳酸菌なんてことになってくると、ヒトの場合は具合が悪いです。

こういう背景で、世界の研究者たちはいったい何をもって「マウスでこうだからたぶんヒトにも応用できるんだ!」と言えるんだろう。

便移植の場合、まず第一に担保すべき安全性はドナーなどからの病原菌混入の防止です。
それさえクリアしていれば、効果の実証はマウスでやるよりもヒトの臨床例を穴の開くほど考察することなんじゃないですかね。

そういえば「臨床研究」という言葉は大学病院などの専売特許だというお声があり、一部で非難されているそう。
わたしとしては特にネーミングにこだわりはないので、「健康第一ゼミナール」とかに変更したらどうかなと思う。(別のところからクレーム入るわ)

感情論的に聞こえてしまうかもしれませんが、ヒトのための治療法の開発に、動物をわざわざ病気の状態にしたり殺したりするのは、まじでバチ当たるから止めたほうがいいと個人的には思う。
それで医療の進歩が遅れてもいいと思うし、医療が進んだら進んだでまた別の病気が生まれるし。

おまけ:海外の研究

マウスがどこまでヒトにおける反応と相関関係があるのかは謎ですが、海外の研究を日本人に当てはめるのにも注意が必要だと思っています。

海外で胃薬買ったら、逆に気持ち悪くなったこととかないですか?
体格も体質も違うから当然だと思うんですが、わりとその辺をすっ飛ばして考えられがちです。

特に腸内細菌に関しては、国によってバランスに差があることは知られていますので、日本人には日本人のための研究が必要になってくるでしょう。

なんか、途方も無いことに思えてきますね。
皆さん、健康なうちに今の健康を維持するための生活と知恵を手に入れておきましょう。

知識だけ先に手に入れてしまうと、オーガニック狂のようになりがちで経済的にしんどいので、自分なりのパターンを身につけると良いと思います。(オーガニックは好きですよ。高いけど)

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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《特許出願中》
腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)