腸内フローラ移植(便移植)の研究開発専門クリニックです。腸内フローラ移植臨床研究会の専属研究機関として、全国の医療機関と連携しています。
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後編|腸に住んでいる菌たち(嫌気性菌)は空気に触れると死ぬのか

守る

前回は、腸内細菌たちのほとんどは空気(酸素)があると増殖しないというお話でした。

前編|腸に住んでいる菌たち(嫌気性菌)は空気に触れると死ぬのか

今日は、実際に菌たちがどのようにして酸素から自分の身を守っているのか、わかっている範囲でお伝えします。
イラストあったらよかったんですけどね、絵苦手なんで許してください。

芽胞を形成(クロストリジウム属など)

芽胞
※このイラストは、フリーのイラストサイトで「芽胞」って調べたら出てきた。こんなんなんや。

偏性嫌気性菌の代表例であり、腸内細菌でいま最も注目を浴びていると言っても過言ではない「クロストリジウム」。

免疫の強弱のコントロール、メンタル面への影響、臓器から臓器への信号発信などの働きが次々と確認される菌たちは、もともとはクロストリジウムの仲間だったことが圧倒的に多いのです。
わたしたちは、彼らを「クロストリジウム系列菌群」と呼んで、崇め奉っています。

クロストリジウム属として検出される比率は少しですが、彼らは「芽胞(がほう)」という分厚い皮で自分を包み込むことができます。
芽胞モードを発動すると、数年から数十年も生きられるそう。
これ、わたしらの年齢で換算したら、恐竜時代くらいから生きてることになるんちゃう。

簡単に言うと冬眠のような状態で、
100度で4時間以上加熱しても耐えることができ、121度15分の高圧滅菌でやっとほとんどの菌を死滅させることができます。

しかも!
しかも驚くべきことに!
この芽胞の状態は、嫌気環境に戻るなど発育条件がそろうと通常の菌体に戻り増殖を始めます。
すさまじい生命力。

わたしも寒いの苦手やし、暖かい部屋で毎日出前頼んで、冬眠しよかな。(それはただのだらしない引きこもりや)

莢膜(きょうまく)で自分を守る(乳酸菌、バクテロイデス、クレブシエラなど)

莢膜
※このイラストは、フリーのイラストサイトで「莢膜」って調べたら出てきた。こんなんなんや。(世の中にはいろんなイラストを書く人がおる)

細菌の中には、莢膜(きょうまく)というものを持つ子たちがいます。
これ、先ほどの芽胞とは全然違うんですが、自分を守るという点では共通しています。

莢膜は、例えば体内に細菌が侵入してきたとき、白血球などの免疫細胞に殺されないように身を守るために持っているもの。

それは、自分の苦手な環境(酸素環境)に置かれたときも同じ。

細菌たちは、自分の遺伝情報を体の端の方に寄せて、莢膜で包み込みます。
そして、あとからまた再生すればいい部分は、優先的に犠牲にします。

なあ!!
こういうダイエットマシンあったら、絶対売れると思わへん?

あなたの残したいところは残し、いらない脂肪は酸素で焼き切る。次世代型莢膜ダイエット

どう?
どう?(やかましいわ)

乳酸菌、バクテロイデス、クレブシエラなどが莢膜を持っています。
他に、細胞壁が強い菌たちも心強いですね。

DNAポリメラーゼの活性を止める

DNAポリメラーゼ

細菌たちは、わたしたち人間と同じようにDNAとRNAの両方を持っています。

そしてDNAポリメラーゼといいまして、「新しいDNA作ろうぜ!」という酵素を活性化することで、今あるDNAを複製したり、エラーの起こったDNAを修復したりしています。
前にちょこっと触れましたね。

【後編】若々しさも病気知らずも長寿も、DNA修復力(と有機酸)にかかっている!

このDNAポリメラーゼの活性を止めることで、それ以上増殖しない状態に「あえて」持っていっているというわけです。

どんどんと支店を展開している鉄板焼きのお店、「テッパンLovers」が、昨今の糖質制限ブームが収まるまで、いったん支店展開を様子見するといった感じですね。
(それよりも店のネーミングセンスが売上に影響を及ぼしそうやけど)

芽胞や莢膜を持っていない菌や、守りきれない部分は、こういう最終手段を使っている。
かしこすぎ。
もう、かしこすぎ。

腸内フローラ移植時における偏性嫌気性菌への配慮

偏性嫌気性菌

偏性嫌気性菌たちが、うんちとして出てきた時点では死なないことはわかったものの、「どれくらい元気なんか?」という問題は残ります。

特に、腸内フローラ移植(便移植)というのは、ドナーの便を採取し、そこから極力不純物を取り除き、別の人の体の中に入れるという方法です。
せっかく入れるのだから、元気いっぱいの菌たちでないと困ります。

偏性嫌気性菌たちが長く酸素のある環境にいると、2つの段階を経て菌は弱っていくそうです。
岐阜大学の医学部さんが、素晴らしい説明をしてくださっています。

酸素の嫌気性菌に対する毒性は静菌的な第一段階と殺菌的な第二段階の2段階で発揮されるらしい。
第一段階とは、細菌の正常な発育に必要な電子が、その菌に有害な酸素分子の還元解毒に使用されている段階である。
第二段階とは、酸素の還元によって生じたスーパーオキサイド・過酸化水素・ハイドロキシラジカルのような毒性産物がDNA,蛋白などに損傷を与え、細胞を殺してしまう段階である。岐阜大学医学部附属 嫌気性菌実験施設

つまり、酸素にさらされて初期の頃は、酸素を中和するためにエネルギーを割くことで、細菌そのものは増殖のためにエネルギーを避けなくなる。
次いで、その状態が続くと、酸素を中和できなくなって死んでしまう。
ということのようです。

これがなにを意味するか?

ドナーからもらった便を、スピーディーに患者さんのお腹に届ける必要があるということです。

偏性嫌気性菌への試み1

ちなみに、うんちの扱いには裏技がありまして、「マイナス80度で冷凍しておけば、時間を止められる」のです。
これは広く知られていて、海外の便バンクでも実際に行われています。
もちろん、うちのラボにもマイナス80度の冷蔵庫がございます。

偏性嫌気性菌への試み2

次に考えられるのは、採取したうんちを「無酸素環境下で保存する」というもの。
酸素の環境を嫌う菌たちなので、正当なことに思えます。

ですが、実際に嫌気環境でドナーから便を採取し、嫌気環境で菌液を作ってみて判明したのは、意外な結果でした。
それは、人工的な嫌気環境で菌たちが思わぬ増殖のしかたをしてしまったんです。

菌たちの増殖スピードは、菌によって違うことはよく知られているのですが、
嫌気環境で保存したことで、もともとのドナーのバランスとは違うバランスの菌液になってしまったんです。

これは大きな発見でした。

偏性嫌気性菌への試み3

そうして最終的にたどり着いたのが、現在特許出願中の菌液の作り方です。
この方法では、すべての菌に対して、「生かさず殺さず」の状態を作ります。

そうして、お腹の中という「彼らの好きな環境」に戻してやると、すぐに増殖し、活動を始めてくれるというわけです。

この方法、いろいろと奥が深い方法なんですが、特許が公開されたら皆さんにわかりやすくご説明できるようにアニメーション作成も考えているので、お楽しみに!

【2019.4.20追記】
10カ国以上のヨーロッパの専門家28名による腸内フローラ移植(FMT)の見解で、酸素環境であろうとそうでなかろうと移植効果に差はなかったという資料がありました。
ご参考までに。

European consensus conference on faecal microbiota transplantation in clinical practice

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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。 でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。 いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。 ご挨拶と自己紹介も併せてご覧ください。
腸内フローラ移植(便微生物移植)を知っていますか?
わたしたちの腸に暮らす腸内細菌たちと健康との関連が、世界中で次々に明らかになってきています。 「すべての病気は腸から始まる」と言われるように、腸内環境が崩れると病気を引き起こすことが知られています。
健康な人の腸内フローラを移植することで、ふたたび健康を取り戻そうという治療法に期待が高まっています。
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