パーキンソン病や耐性菌にFMTが有効[2021.5.31]腸内細菌最新トピック

ちひろです。
脳腸相関と言われて久しいですが、神経系の疾患と腸内細菌との関連についての報告をよく耳にするようになりました。

FMTがパーキンソン病の症状を緩和

(原文)
Evaluation of fecal microbiota transplantation in Parkinson’s disease patients with constipation | Microbial Cell Factories | Full Text

パーキンソン病の患者さんは、便秘や運動症状、非運動症状といった病態に悩まされています。[1]パーキンソン病の病態:運動症候と非運動症候

中国の南京医科大学、Chun-li Zhouらによる研究チームが、便秘症状を持つパーキンソン病の患者さん11人に対してFMTを施行するという試験を実施しました。

結果、パーキンソン病の代表的な症状である運動症状、非運動症状が軽減し、SIBOの症状も改善していることがわかりました。
また腸内細菌の顔ぶれも変わっていて、BlautiaとPrevotellaが増加した一方で、Bacteroidetesが大幅に減ったことも示されています。

この研究から、腸内細菌とパーキンソン病の関係性が示されただけではなく、FMTがパーキンソン病の治療に光を指す可能性があることも示されました。

(英文参考記事)
Fecal Transplants Relieve Parkinson’s Constipation, Motor Symptoms

パーキンソン病と消化器症状、腸内細菌やFMTの可能性

(原文)Gastrointestinal dysfunction in Parkinson’s disease: molecular pathology and implications of gut microbiome, probiotics, and fecal microbiota transplantation | SpringerLink

イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンに所属するVinod Mettaらの研究チームが、パーキンソン病に対するアプローチとして、FMTを含めた腸内細菌による方法を模索しています。

パーキンソン病の初期の診断には、便秘の有無やα-シヌクレインと呼ばれるバイオマーカーが使用されています。

研究チームは、腸内環境の乱れが酸化ストレスや粘膜の炎症を引き起こし、α-シヌクレインを誘導するのではないかと考えました。
そして、腸内環境の悪化がリーキーガットを引き起こし、神経系にまで作用するという脳腸相関の新たな一面を提唱しています。

腸内環境を整える方法の一つとして腸内フローラ移植もあげられています。
が!
が!

有料論文なので、ここまでしか情報がない。
期待させておいてすみません。

腎臓移植後のカルバペネム耐性菌感染症にFMTが有効

臓器移植後は、どうしても抗生物質を使います。
感染症を防ぐため、命を危険にさらさないため、大切なことです。

けれど、抗生物質に耐性を持った菌が増殖してしまい、それ自体が感染症になってしまうことが起こりえます。

今回の報告では、ある37歳の女性のケースが報告されています。
彼女は腎臓を移植を受けたのですが、手術の一ヶ月後にカルバペネム系の抗生物質に耐性を持つクレブシエラ・ニューモニエ感染症にかかってしまいました。

この患者さんにFMTを施行したところ、一週間後にはカルバペネム耐性のクレブシエラが陰性に、17日後には完全に回復なさったそうです。
よかった!

彼女の腸内細菌の多様性も、1週間、3週間、2ヶ月とどんどん回復したとのこと。

1人だけを対象とした報告ですが、とても貴重な報告です。
抗生物質に耐性を持った菌だけが繁殖してしまう疾患にFMTが有効であることは、Clostridium difficile感染症によって世界的に示されています。

今回の報告で、その他の耐性菌治療にもFMTが使える可能性を一気に広げてくれました。

中国の河南大学病院の人たち、ありがとう。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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