腸活サプリメントの意味、月経と脂質異常症バイオマーカーの関係など[2021.5.27]腸内細菌最新トピック

ちひろです。
今日は一発目にちょっとおもしろい記事。

腸内細菌関連のサプリメント、やめはったら?

You Don’t Need to Supplement Your Microbiome | Outside Online

いいですねえ。こういう記事大好き。もっといけいけ!(誰やねん)

世の中には、「プレバイオティクス」「プロバイオティクス」関連のサプリメントがあふれかえっています。
最近では「ポストバイオティクス」なんてものもあるらしい。(腸内細菌の代謝産物だけを取り出した系のやつ)

それらが腸内環境を整え、ひいてはあなたの健康を支援しますよという触れ込みで、ものすごい市場になっているそうな。

で、この記事はその傾向に一石を投じようとしています。
しかもその根拠に、いろんな大学教授なんかの権威を引っ張ってきているところが、さらにしたたかで痛快。

要約すると、「プレバイオもプロバイオも、食べ物から摂ればよくない? その結果、ポストバイオも出るし。サプリメントで劇的に何もかも改善すると思ったら大間違いでっせ」とおっしゃっておられます。

いや、ほんまそれよ。我々のような弱小はあまり敵を作りたくないはゆえ、声を大にしては言えないようなことですが。
でも大企業とタイアップして、PR事業で利益上げるようになったとしても、そのジレンマからは逃れられなさそうやな。

今のうちに言っとくのがいいんかもしれん。
そもそも、もぐもぐ(咀嚼)してよだれいっぱい出て、ごっくん(嚥下)することではじめて消化・代謝のスイッチって入るんですよね。
サプリメントとしていきなり胃に流し込んだところでどれだけの意味が…って思います。

脊髄の損傷により、腸内の細菌とウイルスたちが変化

(原文)
Spinal Cord Injury Changes the Structure and Functional Potential of Gut Bacterial and Viral Communities | mSystems

脊髄の損傷により、その後の腸内細菌や腸内ウイルスの顔ぶれが変化するという研究報告が、オハイオ州立大学のJingjie Duらにより出されました。

脊髄損傷(SCI)患者さんの腸内では、例えば有益なLactobacillus johnsoniiが減少していて、病原性があるとされるWeissella cibariaやLactococcus lactis_Aが増えていることがわかりました。

この研究が発表される前から、脊髄損傷患者さんでは排便障害が起こるなどの、腸内環境悪化が観察されてきました。
また、シンバイオシス研究所でも、これまで健康だった方が脊柱菅狭窄症になり、腸内フローラバランスが崩れたケースも経験しています。

この論文では、脊髄の損傷部位や損傷度合いによってどのように細菌やウイルスが変化するのかを細かく検証しています。

非常に興味深いことが結論部分で述べられています。
「ファージセラピーなどの治療法が適用できる可能性もあり、そうなれば抗生物質の使用を減らせるかもしれない」

ファージセラピーというのは、抗生物質のように「皆殺し」系ではなく、特定の細菌にのみ作用するという物質で、実は古くからロシアなどで使われてきた方法です。
効く細菌の幅を増やすためにファージを混ぜたりすることが行われてきましたが、西欧ではより手軽な抗生物質が承認され、ファージセラピーはあまり活用されてきませんでした。

けれど抗生物質が効かないようなバイオフィルムに包まれた細菌まで到達できることや、抗生物質の過剰使用が問題視されている今、もう一度見直されるべき治療法なのかもしれませんね。

月経サイクルによって、脂質異常症のバイオマーカー値が変化

(原文)
Variations in biomarkers of dyslipidemia and dysbiosis during the menstrual cycle: a pilot study in healthy volunteers | BMC Women’s Health | Full Text

脂質異常症は、欧米を中心に世界中で増えている症状です。
心疾患リスクを高め、腸内細菌との関連性も指摘されています。

従来では(日本では現在も)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値やその比率を見ることで脂質異常症のバイオマーカーとしてきました。

近年では、non HDLコレステロール、アポリポタンパク質B(ApoB)、レムナントCという値をバイオマーカーにするということが推奨されています。
バイオマーカーってのは、ある病気があるかどうかの指標となる、血液検査などでわかる数値のこと。
分析技術の発達につれ、バイオマーカーも変化していきます。

また、腸内細菌の代謝産物であるTMAOも、脂質異常症のバイオマーカーとして知られるようになってきました。

結果。
排卵期と黄体期でnon HDLコレステロール、アポリポタンパク質B(ApoB)が上昇、
黄体期でレムナントCが上昇していました。
TMAOは時期を通して変化せず、エストロゲンホルモンの量とも関係しませんでした。

この研究を通して、2つのことが言えると思います。

ひとつめは、
脂質異常症の診断には、月経サイクルを考慮する必要があるのではないか」ということ。

そしてもうひとつが、個人的に強調したいこと。
腸内細菌の代謝産物であるTMAOが、月経サイクルに左右されない、脂質異常症の新しいバイオマーカーになるのではないか」ということ。

女性の人はご存知やと思いますが、排卵期、それに続く黄体期は食欲が増します。
しかも、脂質や糖質を含んだジャンキーなものが食べたくなる。
それによってもしかしたら、血中のnon HDLコレステロールやApoBの値は変化するのかもしれませんね。

糖尿病の診断における血糖値がnon HDLコレステロールやApoBやとしたら、TMAOはHb-A1cになる可能性を秘めているのかも!
そう思うと、興奮します。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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