ストレスと腸内フローラの関連機序が一部解明。関節炎や肺気腫とも関連[2021.5.24]腸内細菌最新トピック

ちひろです。腸内細菌が医療の縦割りを凌駕しているのか、それとも医療はもともと縦割りできるものではなかったのか。
最近そんなことをよく考えます。

ストレスが腸内フローラを乱す、その機序の一部が解明

(原文)
Decrease of α-defensin impairs intestinal metabolite homeostasis via dysbiosis in mouse chronic social defeat stress model | Scientific Reports

心理的なストレスが腸内フローラの乱れを引き起こし、腸内フローラの乱れがうつ状態を引き起こす。
このような相互の因果関係は、結果としては知られていましたが、その詳しい機序はわかっていませんでした。

今回、北大の研究チームが「小腸のパネート細胞から分泌されるαディフェンシンが減少し、腸内フローラとその代謝物の恒常性を乱すのでは」という仮説を立て、その仮説を検証しました。

(日本語解説記事)
北大、心理的ストレスが腸内細菌叢にも異常を誘発するメカニズムを解明 | TECH+
精神的ストレスと腸内細菌の関連機序を解明|最新医療ニュース|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト

乾癬性関節炎(PsA)に対する便移植は安全 効果はさらに検証の必要あり

(原文)
Safety and efficacy of faecal microbiota transplantation for active peripheral psoriatic arthritis: an exploratory randomised placebo-controlled trial | Annals of the Rheumatic Diseases

デンマークのOdense大学病院のMaja Skov Kragsnaes、Torkell Ellingsenらによる研究チームによる報告。

乾癬性関節炎とは、乾癬の全患者数の約3割に見られる病態です。日本では10%〜15%と、世界と比較すると少ない発症率です。[1]乾癬性関節炎 (Psoriatic Arthritis, PsA)|東大病院アレルギーリウマチ内科

関節リウマチなどと同じく自己免疫疾患とみなされており、炎症を抑える目的で投薬治療が施されます。

今回の研究では、乾癬性関節炎の患者さんに対して、FMTの二重盲検試験を行いました。二重盲検試験というのは、プラセボ効果をきちんと測定するタイプの試験ですよ〜ということです。
プラセボ効果っていうのは、「ただのラムネやのに、信頼する先生が処方してくれたっていう安心感で治った」っていう事象を言います。(そこまで解説いらん?)

結果は、「FMTは効果があるとは言えないが、少なくとも安全である」というなんとも頼りないものでした。
けれどこれ、FMT1回しかしてないんです。

おそらくは、まず安全性を確認するためにそうしたと思われますが、自己免疫疾患に対して1回の移植だけをするというのは、我々からすると「リバウンド(=生命のホメオスタシスによる引き戻し現象)」のリスクをかえって上げてしまうと感じられるので、勇気あるなぁなんて思ってしまう。

この結果に対して研究チームは案外好意的に受け取っていて、ラストネームのTorkell Ellingsenは下記のインタビュー記事で今後の研究に意欲的なコメントを発しています。
Safe but ineffective stool transplantation in PsA trial – TheHealthGuild

それにしても、北欧男子って相変わらずイケメン。留学したい。

慢性閉塞性肺疾患と腸内細菌の関連が明らかに

(原文)
Gut microbiota modulates COPD pathogenesis: role of anti-inflammatory Parabacteroides goldsteinii lipopolysaccharide | Gut

台湾のChang Gung大学のChia-Chen Luらの研究チームが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と腸内細菌の関連性を見出しました。

慢性閉塞性肺疾患という病態は、これまで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきたものです。
ヘビースモーカーが息をするときにヒューヒューなるやつです。

今回の研究では、腸内細菌のうちとくにParabacteroides goldsteiniiという菌たちにスポットライトが当たりました。
この菌が出してくれるリポ多糖類が、TLR-4という免疫の受容体を阻害する方向に働き、炎症を抑えてくれるというメカニズムのようです。

(英文ニュース)
Link Between Gut Microbiota and Lung COPD Established – Pulmonology Advisor

TRLというのは、トル・ライク・レセプターといいまして、
トル(Toll)はショウジョウバエの発生において背と腹の軸を決定する遺伝子として1985年に発見されたやつ、
ライク(Like)は「〜的な〜」って意味合いの単語で、
レセプター(Receptor)は文字通り「受容体」です。

平たく言いますと、TLRというのは免疫細胞を覚醒させるスイッチみたいなもんで、TLR-4はそれのひとつです。

TLR-4は、細菌への免疫応答や、自己免疫疾患との関連が明らかになっています。[2]自己免疫疾患における Toll-like receptor 4 の役割

あんまり突っ込みすぎると「簡単に解説する」っていうこのブログの意味も薄れてくるし、わたしもだんだん自信無くなってくるし、このへんで許してやったらどうや。

とにかく(便利な言葉)、
今まで呼吸器系疾患だと思われていた慢性閉塞性肺疾患と、腸内細菌の関連が発見されたわけです。
呼吸器科と消化器内科が手を取り合う瞬間ですね。

医療の縦割り診療科は、近い将来終わると思います。
でもそうなると、お医者さんが勉強せなあかんことが膨大になりすぎて、お医者さん不足になるんちゃうか。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員・広報(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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《特許出願中》
腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)