菌たちが放射線から守ってくれる[2020.11.24]腸内細菌最新トピック

菌たちは、あなたの体に緊急事態が起こったら、そのダメージを最小限に留めるために自分たちのバランスを変化させます。
それはときに、放射線からのダメージをも緩和するほど。
ありがたいですね。

でもその「無理な歪み」が長く続くと、病気になってしまうことも。

1型糖尿病、自閉症スペクトラム、様々な疾患でFMTが普及してきています。

実臨床で糞便移植の有効性を確認

Fecal Microbiota Transplant is Highly Effective in Real-World Practice: Initial Results from the FMT National Registry – PubMed

(日本語)実臨床で糞便移植の有効性を確認|医療ニュース|Medical Tribune

FMTのCDI(クロストリジウム・ディフィシル感染症)に対する有効性は数々の報告がありますが、長期的な安全性はまだまだ時間をかけて慎重に判断する必要があります。
そんな中、初めて長期間における有効性が確認されたという記事です。

なお、同研究にはFMTの臨床試験では対象から除外されることが多いIBD合併例や免疫低下例も登録されていました。
臨床試験ではリスクの低い方法が採られがちですが、今回の試験で対象者を広く取ったことで、FMTの安全性がより広範囲に証明される結果となりました。

腸内細菌が放射線障害からあなたを守る

Multi-omics analyses of radiation survivors identify radioprotective microbes and metabolites | Science

日本語での解説:11月3日 腸内細菌が放射線障害からあなたを守る (10月30日号 Science 掲載論文) | AASJホームページ

「腸内細菌は備わるんや!」と声高にいつも叫んでいるんですが、これこそまさに。
外部から放射線を当てられることにより、宿主を守るために腸内細菌たちがバランスを歪めています。

つまり何が言いたいかと言うと、放射線の照射後に増えている菌たちは、こういう非常時だからこそ増えているのであって、普通に暮らしているときに「善玉」「悪玉」と簡単に分類できるもんではないんですよってことです。

この考え方、CT検査のアフターケアとかに応用してほしいなあ。

1型糖尿病に自家FMTが有効

Faecal microbiota transplantation halts progression of human new-onset type 1 diabetes in a randomised controlled trial – PubMed

(日本語での解説)
1型糖尿病に糞便移植が有効|医療ニュース|Medical Tribune

de Groot氏らは「われわれの仮説と異なり、自家FMTは健康ドナー由来の他家FMTよりも優れていた。ただし、他家FMT群における1年後のCペプチド応答の低下幅は、無治療の場合の予想に比べ少なかった」と指摘。

1型糖尿病に糞便移植が有効|医療ニュース|Medical Tribune

患者さんとドナーの相性って大事なんですね。
相性を一般化するためにあらゆる変数を考慮してドナーを選択するんですが、結局最後は「移植してみないとわからん」というのが本音です。

寄生虫が1型糖尿病の発症を抑える仕組みを解明 腸内菌が分泌する糖がT細胞を誘導

CD8 + regulatory T cells are critical in prevention of autoimmune-mediated diabetes | Nature Communications

(日本語での解説)
寄生虫が1型糖尿病の発症を抑える仕組みを解明 腸内菌が分泌する糖がT細胞を誘導 自己免疫疾患の予防・治療に新たな光 | ニュース | 糖尿病リソースガイド

自閉症スペクトラム(ASD)に対するFMTでは、血漿検査での代謝に大きな変化

以前、自閉症スペクトラムとFMTの関係を本格的に追跡した先行研究をご紹介しました。

この研究チームから続報です。
FMTの前後では、便そのものよりも血液検査(血漿での代謝プロファイル)のほうがより大きな変化があったとのこと。

子どもたちから採血するのは忍びないですが、こういった検査によってFMTの効果が正しく評価されて、自閉症スペクトラムの患者さんが望みさえすればFMTを手軽に受けられる時代よ、早く来い。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
個人ブログ→千のえんぴつ
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《特許出願中》
腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)