お米を食べる民族はコロナにかかりにくいという論文[2020.9.9]腸内細菌最新トピック

かつて、卑弥呼さまの時代には、病気は魔物的なやつのせいだと思われていました。
医療に科学の考え方が取り入れられるようになり、
ヒトに試す前に試験管や動物で実験してからにしようという倫理観が生まれ、
近頃は試験管で実験する前にコンピュータで計算してから実験しようという雰囲気が生まれつつあります。
条件を揃えることで研究が加速した、という見方もできるでしょうし、
新しい治療法が見いだされてから患者さんが救われるまでの期間が長すぎて、寿命が来てしまうわという見方もあるでしょう。
どっちもどっちなのかもしれませんが、きっといい方向に進んでいるんだという希望は持っていたいですね。
さて、腸内細菌界隈も、玉石混交ながら研究が盛り上がってきています。
目次
「米が主食の国のほうがCOVID-19感染率低い」論文がアメリカのオンライン研究誌に掲載
「米が主食の国のほうがCOVID-19感染率低い」論文がアメリカのオンライン研究誌に掲載|食品産業新聞社ニュースWEB
これはもう完全に腸内細菌の力でしかない。
糖質制限で米を我慢している人、頑張って我慢してるのにそのうえコロナにもかかりやすいなんて、気の毒でしかない。
もうすぐ新米の季節やし、農家さんたちに感謝して一粒も残さず食べましょう。
腸内細菌叢からIBS(過敏性腸症候群)を判定するアルゴリズムについての論文
腸内細菌叢からIBS(過敏性腸症候群)を判定するアルゴリズムについての論文が Journal of Clinical Medicine に公開されました|株式会社サイキンソーのプレスリリース
(原文)
JCM | Free Full-Text | Usefulness of Machine Learning-Based Gut Microbiome Analysis for Identifying Patients with Irritable Bowels Syndrome
1種類の菌の存在割合のみでIBSか否かを判別できるほどの大きな差は認められませんでした。そこで、多変量データを扱う機械学習アルゴリズムを用いてIBS患者を識別するための判別モデルの確立を試みました。
↑これこれ! この統計&AI装備うらやましすぎ。
ちなみに我が研究所では、大量のフローラ解析結果と問診票をにらみつづけて、複数の菌群の比率による独自のフローラ解析ロジックをつくって特許出しました。
誰かライセンス使ってくれへんかなあ。
多発性硬化症の増悪に腸内環境が関連
国立精神・神経医療研究センターのサイトより
Dysbiosis in the Gut Microbiome Shapes Disease Course in the Different Stages of Multiple Sclerosis | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター National Center of Neurology and Psychiatry
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多発性硬化症の増悪に腸内環境が関連|医療ニュース|Medical Tribune
腸疾患だけではなく、こういった神経系の疾患にも腸内細菌が関わっている。
本当に無限の可能性がある分野ですよね。
菌の顔ぶれ(DNA解析)だけじゃなく、元気度(メタボローム解析)も併せて見ることが必須ですね。
腸内細菌が中枢神経系炎症を促進する仕組みを解明 -多発性硬化症の予防・治療に新たな可能性-
腸内細菌が中枢神経系炎症を促進する仕組みを解明 -多発性硬化症の予防・治療に新たな可能性- | 横浜市立大学
こちらも似た感じの研究に見えますが、健常者との比較というよりも、免疫応答の仕組みを解明した研究です。
腸内細菌叢改変でアルコール依存症軽減可能
腸内細菌叢改変でアルコール依存症軽減可能と新たな研究 – SankeiBiz(サンケイビズ)
わたしたちは、腸内細菌が食べたいと要求するものを「食べたい」と感じさせていただいています。
アルコールも然り。
事実、アルコールをたくさん召し上がる方の腸内細菌は、非常に特徴的なバランスをしています。
健康な方の便と言っても、いろいろです。
アルコールが大嫌いな菌たちばかりを送り込むと、めちゃめちゃお酒によわくなったりするんかな。
FMTの用途って、たくさんあるんですねぇ。
この記事を書いた人

- 研究員(菌作家)
-
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
個人ブログ→千のえんぴつ
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《特許出願中》
腸内フローラ移植
腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)