シンバイオシス研究所は腸内フローラ移植(便移植)の研究開発機関です。腸内フローラ移植臨床研究会の専属研究機関として、全国の医療機関と連携しています。
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便バンクJapanbiomeについて臨床検査技師が語る[第3回総会発表内容]

2019年9月23日、一般財団法人腸内フローラ移植臨床研究会の第3回総会「腸内細菌から人類への手紙」が開催されました。

今回は、当研究所 総括研究員 岡洋一郎の発表内容のうち、「Japanbiome(便バンク)」についての発表をまるごとお届けします!

Japanbiome(便バンク)についての発表は、動画の10分20秒ごろからご覧ください。

Japanbiome(便バンク)開設について

Japanbiome(ジャパンバイオーム)は2019年7月に誕生しました。みなさんもご存じの献血や輸血などを行う赤十字血液センターの糞便版ということになります。
今回は特に安全性について、検査項目は何かではなく、なぜ必要かの概要のお話をします。

Japanbiomeは、腸内フローラ移植のためのドナーの糞便バンク施設です。糞便の提供は厳しい検査基準をパスしたものだけを受け入れています。

理念(あるいはモットー)は、身近に感じていただける安全・安心できる腸内フローラ移植の提供提供時のドナー便の特性を考慮した選択にあります。詳しい運用や検査などについては、腸内フローラ移植臨床研究会のホームページ(外部サイト)をご覧ください。

FMTが移植と呼ばれるゆえん

さて、先ほど腸内フローラ移植の施設と言いましたが、現在行われている移植というものをおさらいしたいと思います。

まず、心臓や肝臓を移植する臓器移植、次に心臓弁、血管、皮膚、角膜などを移植する組織移植、さらに骨や骨髄の移植、近年発展の目覚ましいips細胞など利用した細胞移植、また輸血も移植ということが言えると思います。
そしてこれらはすべて医療して認められ、成り立っています。

一方で我々が扱う糞便も、ドナーからレシピエントへ提供される点で移植ということになり、これを糞便細菌叢移植(FMT)と言います。
ただし、FMTは医療というカテゴリーからは外れています。

他の「移植」治療とのちがい

ではFMTは他の移植と何が違うのか?

1つ目、他の移植材料はそもそもヒトの活動に必要なものです。しかし糞便は排泄物です。通常、排泄物とは不要物ですが、これをFMTでは利用します。

2つ目、他の移植材料は医療関係者が採取や摘出を行うケースがほとんどです。献血も移動車や献血ルームに医療関係者がいます。
また、採取や摘出する場所は適切な環境下(クリーン環境)で行われています。

一方、糞便採取は排便を医療関係者が監視することはなくドナー自身で行っています。また糞便採取は各自宅で行われています。

3つ目、他の移植の多くは身体の無菌的な場所に材料が移植されるので移植材料そのものが無菌でなければなりません。一方、FMTは糞便中の生菌が必要となります。

4つ目、先にもお話しましたようにFMT以外の移植は医療として社会的に認められています。一方でFMTは法的な整備範囲外にあります。

FMTに求められるものとは?

この4点を踏まえてFMTに求められるものは何かということですが、大きく3つあります。

まず、厳格なドナーの選定です。
先にも述べたように採便に関してはドナー自身で行ってもらわなくてはならず、安定的に供給していただく必要があります。

次に、提供する糞便は滅菌処理を行わないため、感染リスクが高まります。よって糞便の安全性を高めた管理が必要になります。

最後はトレーサビリティです。
提供された便は手を少し加えて移植菌液として製品となって患者に移植されます。
よってドナーからバンク、そしてレシピエントと使用された糞便が追跡できる管理が必要です。

ドナーの選定

では求められる条件を少し詳しく掘り下げてみていきます。
まずはドナー登録です。

ドナーはまず審査を受ける前に応募条件を満たしていなければなりません。
例えばガンや自己免疫疾患の既往歴がない。
あるいは感染症疾患の治療中でないなどです。

審査前条件を満たせば問診や面談の1次審査となります。
1次審査をパスすれば2次審査、糞便の感染症検査、腸内フローラ解析検査となります。
2次審査をパスすると最終審査で血液検査と医師の診察になります。
そして、総合的に医師によりドナー登録の合否を判断していただきます。

ただし、登録に至っても2ヶ月毎の問診と定期検査を受けていただく必要があり、ドナー基準を満たさなければなりません。

ドナー便の安全性確保

次はドナー便の安全性です。
ここは感染管理上、最も重要です。

登録に至ったドナーから糞便の提出毎に感染症関連事項に関する問診票を添付していただきます。

次に便がバンクに届きましたら便の肉眼的観察を行います。(ブリストルスケールなど)また、移植に供給する便は約2ヶ月毎の検査(血液、便)でその前後検査が合格した便を使用します。
(例えば、4/1と6/1の検査がともに合格であった場合、この間に提出のあった便のみを使用するということです。よって6/1以降に提出された便は8/1の検査を待っての使用となります)

最後にバンクから移植菌液の発送についてです。
移植菌液は相当の梱包を施しますが、供給元に届くまで、もちろん未開封でなければなりません。

よって移植菌液の梱包袋にセキュリティーシールを付けています。

また、輸送は宅配便を利用しており、輸送時の温度管理も重要です。当バンクでは抜打ち検査として不可逆的な温度管理シールを移植菌液バックに貼り監視しています。

感染管理の例をご紹介します。このスライドの報告は国連が出したものです。

近年、抗生剤の乱用により薬剤耐性菌が問題となってきています。報告では2050年は年1千万ものヒトがこの薬剤耐性菌感染症で亡くなるおそれがあると警告しています。薬剤耐性菌は健康なヒトでも保菌している場合があり、検査をしてみないと保菌しているかどうかわかりません。

一方で免疫不全者が耐性菌に感染すれば使用できる抗生剤が限られるまたは効かないということがあり、最悪の場合は死にいたります。

この6月にはアメリカで多剤耐性菌を有していた便を免疫不全の患者に移植した死亡例がありました。原因は提供便の耐性菌検査を実施していなかったことによるものです。

この夏もかなり暑かったことと思います。また最近、日本を訪れる外国人をよく見かけることと思います。また来年は東京でオリンピックが控えています。日本の気候が熱くなると温かいところでしか生活できなかった感染症をもたらす外来種が生きやすくなります。また、グローバルな人の行き来は特定な場所以外で留まっていた感染症を広めてしまう恐れがあります。

実際に来日される外国人の結核が近年増加傾向にあります。また、日本国内で性感染症が増加傾向にあるそうです。

よって今後、糞便の感染管理を厳しく見ていく必要があります。

トレーサビリティ

次は糞便のトレーサビリティについてです。
ドナー、ドナー便、移植用便原液にはそれぞれID番号があり、糞便提供、糞便保管・菌液作成、菌液供給についてそれぞれが把握できる体制を整えています。

また、問題発生時に遡及調査ができるよう血清、便の一部をそれぞれ保管しています。

この表は今までのお話をまとめた、ドナー便の安全体制の流れについてになります。糞便の採取と菌液の発送では多くの包装、梱包を施していることがお分かりになっていただけると思います。

採取時の輸送では糞便をラップ、消臭袋で包み蓋つきの容器に入れて、保冷剤と一緒にさらに酸素不透過袋で包み開封シールを付けてフリージング袋に入れます。届いた糞便は重量計測をして-80°Cで保管します。
菌液発送では菌液バッグは必要時温度管理シールを貼り、保冷剤で合わせて脱酸素剤と一緒に酸素不透過袋で包み、開封シールを付けます。そしてフリージング袋に入れます。

このスライドはドナー便到着時の写真です。宅配便で送られてきます。
糞便は緩衝材で包んでいて、感染症関連事項の問診票が同封されています。
蓋つきの容器に糞便が入っています。

このスライドは菌液を梱包した時の写真です。分かりにくいですが温度管理シールを菌液バッグに貼っています。
緩衝材を詰め、温度管理シールを貼ったときはその案内を同封して、異常があれば連絡をもらうようにしています。

一番右が発送前の状態です。

以上、便バンク運用の概要についてお話をさせていただきました。安全なドナー便の確保、そして菌液にして供給できる基本的な体制は整いました。一方、移植菌液の品質、効果についてはまだ十分な検証に至っていない部分があり、これからの課題としてFMTをより身近に感じていただけるよう努力を続けて参ります。

Japanbiome(便バンク)についての発表は、動画の10分20秒ごろからご覧ください。

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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。 でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。 いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
腸内フローラ移植(便微生物移植)を知っていますか?
わたしたちの腸に暮らす腸内細菌たちと健康との関連が、世界中で次々に明らかになってきています。 「すべての病気は腸から始まる」と言われるように、腸内環境が崩れると病気を引き起こすことが知られています。
健康な人の腸内フローラを移植することで、ふたたび健康を取り戻そうという治療法に期待が高まっています。
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