腸内フローラ移植は、何歳で受けるのが一番いいのかを考える

腸内フローラ移植適齢期

先日、腸内フローラバランスはだいたい1歳くらいまでに決まってしまうというお話をしました。
腸内フローラバランスは、生まれつき決まっているのか

その後の人生では、生活習慣やストレスなどで腸内フローラバランスが少なからず影響を受けます。
うまく形成できなかった、あるいは崩れてしまったバランスを腸内フローラ移植によって戻そうと試みるとき、腸内フローラが変わってくれやすい年齢ってあるんでしょうか?

最近、未成年の方の移植が続いたので、ふとそんなことを考えました。
4歳のこの子と、19歳の彼では、同じ病気でも変化が違ってくるんだろうか。
もちろん、年齢以外の個人差も大きいのですけれども。

ホメオスタシス(恒常性)と生命

ホメオスタシス

「ホメオスタシス」って聞いたことあります?
わたし、最初に聞いたときは「褒めてつかわす」やと思った。(なんと自分に都合の良い耳)

ホメオスタシスというのは「恒常性」とも言われ、身体を一定の状態に保とうとしてくれる機能です。

たとえば体温。
世界でもっとも有名なラブストーリーと言っても過言ではない『タイタニック』で、最後に船が氷の浮かぶ海へ沈みますね。
その時、海へ投げ出された乗客たちを思い出してください。
ぶるぶるぶるぶる、がくがくがくがく、震えまくっていますね。
そんなことをしたら体力を消耗してしまいそうなのに、もれなく皆さん震えています。

これが「ホメオスタシス」の機能。

人間というのは、一定の体温以下になってしまうと死んでしまいます。
そのため、急激に体温が下がると、まだ死ぬレベルではなくても身体は体温を元に戻そうとするので、震えて熱を発しようとするわけです。
暑いときに汗をかいて熱を逃がそうとするのも、同じですね。

他にも、血糖値が上がりすぎないようにすい臓がインスリンを出すのも、極端な食事制限によるダイエット後のリバウンドも、頭を使ったあとにむしょうに甘いものが食べたくなるのも、ぜーんぶこの「ホメオスタシス」の機能です。

わたしたちの身体には、こういう「今の状態を維持しようとする力」が常に働いています。
倒れない人形、起き上がり小法師みたいな感じですね。

リバウンドはほんまにいらんけど、生命の「生き続ける」力ってすごいんやなあと感心します。
死んだらもうこちら側には戻って来られへんし、生き続けるって、一瞬一瞬がすごい大変なことの積み重ねなんですね。

免疫の学校「胸腺」

胸腺

みなさんよくご存知の「免疫」もホメオスタシスの一種です。

たとえば、めちゃくちゃ高級なレストランに行くときのことを想像してください。
もしわたしが蛍光ピンクの全身タイツで行ったとしたら、まず間違いなく入れてもらえません。
法律的にアウトなわけでもないし、悪いことをしているわけでもなくても、入店を断られます。

これは、「高級レストランで食事をするということ」という体験をお客さまに提供しているレストランの機能を、全身タイツのわたしの存在によってうまく果たせなくなるだろうと支配人が判断して、つまみ出されてしまうんですね。
もしかしたら、逆に笑い取れるかもしれへんのに。(間違いなくスベるで)

あるいは、わたしの家に空き巣が入ったとします。
当然おまわりさんが来ますね。大阪府警の人が、二人くらい来るイメージでしょうか。
うまく行けば空き巣は捕まえられ、市民の平和が守られます。

こういうことを身体の中でしてくれるのが、「免疫」です。

ちなみに、自分の免疫力があまりにも過剰に反応してしまっても、身体にとって具合の悪いことが起こります。
その代表的なものが、アトピーです。

先ほどの空き巣の例で言うと、おまわりさんでいいところを軍隊と大砲が出動してしまうのが、アトピーです。
空き巣だけではなくて、あたり一面焼け野原にしてしまいます。

首相官邸に空き巣が入ったら軍隊出てくるんかもしれんけど、わたし一般市民やし。
おまわりさんで、ほんまに十分。

しかも、アトピーの状態はものすごくセンシティブになっているので、郵便局の人がお手紙届けに来てくれただけやのに「空き巣やー!!! 打てーーーー!!!!」ってなってしまっているんです。

そんな人間の免疫力というのは生まれつき備わっているわけではなく、成長とともについていきます。
その免疫の学校とも言える臓器が、「胸腺」です。

胸腺は、胸のあいだと喉との中間くらいにある、ハートを逆さにしたような臓器です。
ここでリンパ球たちに、これからどんな身体の環境変化に出会うか、そのときどうしたらいいのかを教育してくれます。

17〜8歳くらいで教育期間は終了し、胸腺はその役割を終えると言われています。
つまり、17〜8歳で一生分の免疫学を学んでしまうのです。

胸腺との関係で見る、腸内フローラ移植の適齢期

腸内フローラ

免疫のことなど何も知らなかった幼少期は、当然のことながら免疫力の使い方が不器用です。
そのため、すぐに風邪をひいてしまったり、免疫力を過剰に働かせてしまってアトピーになったりするのです。

そしてお勉強したての17〜8歳は、自分の免疫力をどのように使えばいいかを一番良く知っている時期です。
外からの悪いものははねつけるけれども、毒ではない食べ物に対する免疫は寛容になっていきます。

わたしも、幼少期は通行人が振り返るほどのアトピーでしたが、中学生高校生くらいになるとかなり治まりました。

そしてその免疫力というのは、今度は年齢とともに落ちていきます。
40歳以降になると、免疫力は下降曲線を辿り始めます。

高校生の頃に勉強した「いとおかし」とか、「解の公式」とか、もう全然覚えてませんよね。
そんな感じです。
あの頃は、微積分とかできたし、徳川家の将軍も余裕で全部覚えてたのに。

人間の記憶力って悲しい。

少し話がそれましたが、そういうわけで人間の免疫力というのは17〜8歳でピークを迎えます。
そして、腸内フローラ移植で違う人の腸内細菌を入れるということは、基本的に「免疫のホメオスタシス」には反することになってしまうんですね。

たとえそれが「いいバランスに変える」ことであっても、変化には敏感なお年頃ということです。
特に、「6歳くらいまでのお子様と40歳以降の方はマシになるのが早い」という症例が多いのは、ここが理由だと考えます。

もちろん病気をずっと抱えたまま人生を前に進めるよりは、多少変わってくれにくくても早くフローラバランスを改善して、ちょっとでも楽になっていただきたいです。
17、8歳からしばらくのあいだは移植効果がないというわけではありません。
逆に、この付近の年齢で新しいフローラバランスを記憶してもらえると、その後の人生とても頼もしい存在になります。

当研究所の移植は、なるべく新しいフローラバランスが自分の身体に異物だととられないようにいくつもの工夫を凝らしています。
疾病によっても違いますし、罹患歴が長くなれば、やはりバランスを変えるのは難しくなります。

たくさんの方のお役に立てるように、日夜研究を進めていくことを誓います。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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《特許出願中》
腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)