シンバイオシス研究所は腸内フローラ移植(便移植)の研究開発機関です。腸内フローラ移植臨床研究会の専属研究機関として、全国の医療機関と連携しています。
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自宅で安全に便移植をする方法を極限まで考える

まずはじめに!!
個人的にも、今の立場的にも、自宅で便移植を行うことはまったくおすすめできません。
これをまず最初に申し上げておきます。

ただ、高いじゃないですか。移植費用。
治験だけでは受けたい人が受けられないから、対象疾患を比較的広めにとって、全国の臨床医の先生に協力してもらって、より効果的な方法を編み出して特許まで出して、移植を提供しているわけです。

それやのに、こんなアホみたいに高い値段するなんて、全然届けるべき人に届けられてない感じがします。

そこで、自宅で便移植をするリスクをそれなりにわかっている立場から、それでも自宅でDo It Yourselfの便移植をしたい人のために、可能性を極限まで探ってみます。

DIY便移植に伴うリスク

こういう系の記事では、現状を紹介して、リスクを紹介して、最終的に宣伝につなげる系の記事構成が多いですが、今日はまずリスクから話しますね。
家でやる場合は、今から話すリスクをどこまで減らせるかが肝になります。

感染症にかかるリスク

とにもかくにもこれです。
便に検出される食中毒菌だけでも、ざっとこんだけあります。

  • 黄色ブドウ球菌
  • セレウス菌
  • ウエルシュ菌
  • ボツリヌス菌
  • 赤痢菌
  • 病原性大腸菌(EPEC,ETEC,EHEC,EIEC,EAEC)
  • サルモネラ菌
  • エルシニア菌
  • プレジオモナス菌
  • コレラ菌
  • 腸炎ビブリオ菌
  • ナグビブリオ菌
  • エロモナス菌
  • キャンピロバクター菌

あとは、結核菌とか、ノロウイルスとかの可能性も捨てきれません。

そのうえ、血液検査をする必要のあるエイズ、梅毒、B型・C型肝炎、サイトメガロウイルスなんかも心配です。

有料記事だったのでここにはリンク載せませんが、国内で潰瘍性大腸炎を患った人が自宅で便移植をして、めっちゃ体調悪なった事例もあります。
主治医は、感染症への感染を疑っていました。

耐性菌を受け継ぐリスク

耐性菌というのは、薬が効かないように進化した菌たちです。

人間は様々な抗生物質や抗ウイルス薬を作って微生物を殺そうとしますが、基本的には微生物のほうが何倍も進化のスピードは速いし、人間よりもかしこいです。

近い将来、主要な死因になるだろうとして耐性菌が挙げられているほどです。

耐性菌の種類は、例えば以下の通り。

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)
ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌)

他にも、健康な人の腸にもいるけれど、特殊な環境下で爆発的に増えてしまうことで命を脅かすクロストリジウム・ディフィシルという菌もあります。(そう、それがあのクロストリジウム・ディフィシル感染症)

(参考)日本ではなぜクロストリジウム・ディフィシル感染症が深刻化しないのか

免疫力の高い健康な人に住み着いている分には悪さをしなくても、免疫力の落ちた患者さんの腸に入った途端に暴れだす菌たちもいます。

アメリカで、ドナーの耐性菌検査を行わずに免疫不全状態の患者さんに便移植を行ったことで、死亡例があったことは記憶に新しいです。

今の治療との相性が悪いリスク

自宅で便移植を行う場合、主治医の先生は「便移植が行われていない想定」で治療をしてくださっているでしょう。

その場合、投薬なども免疫抑制を目的として行っていたり、抗生物質を大量に服用する治療が行われているかもしれません。

そんな状態で、スクリーン検査をしていないドナーの便を入れることの危険性は、ここまで読んでくださった方ならおわかりだと思います。

主治医がいないリスク

クロストリジウム・ディフィシル感染症に関しては、ある程度の便移植プロトコルが定められるようになってきました。

(参考)
FMT Protocol
FMT国内指針運営委員会(アメリカ国立衛生研究所、アメリカ消化器病学会)(外部リンク

European consensus conference on faecal microbiota transplantation in clinical practice | Gut
欧州10カ国以上、28人の有識者会議で合意を得たFMTの臨床応用指針(外部リンク

けれど、その他の疾患に関しては、ドナー選定や移植回数など、まだまだ不透明な部分も多く存在します。

そんな状況で自宅で便移植を行ったとして、もし何か不調を感じたらどうしますか?
誰にも相談できないまま、Google検索しますか?

自分でやるということは、そういうことなんです。

海外のDIY便移植事情

さて、ここまでさんざん脅してしまいましたが、ここからは便移植を自宅で行う可能性について、前向きに検討していきましょう!

実は、海外ではDIY便移植をする人が結構いらっしゃるようで、ちょっと検索すると、かなりの記事や動画がヒットします。

The World of Do-It-Yourself Fecal Transplants (Thanks, YouTube!) – VICE (外部サイト)

今、玄米ご飯を咀嚼しながら書いてるんで、さすがに動画見るのは許してください。

幸運なことに、FMT(便移植)はすごく簡単だから、家でもできちゃうんだ!
あ、でもベッドやソファ、カーペットの上なんかでやらないほうがいいよ。飛び散っちゃうかもしれないからね!Haha!

The World of Do-It-Yourself Fecal Transplants

↑これ、「Haha!」以外は原文ママですよ。

人生ゲームで、10分の1の確率で億万長者になるか、10分の9の確率で強制労働者カイジ状態になるかっていう賭けをするかどうか選ぶっていうコマがあったけど、海外の人はやっぱりアメリカンドリーム狙うんでしょうか。
私は毎回賭けをしないほうを選びましたが、父はほぼ毎回強制労働者になってました。

でも病気で切羽詰まってたら、DIY便移植もやってしまうんでしょうか。

ちなみに、アメリカ最大の便バンクOpenBiomeでは、自宅移植用の菌液は販売していないそうです。

Q, 自宅用の菌液を販売していますか?

A, いいえ。安全で適切な使用のため、また治験を取り扱うFDAの規制に従い、私たちは医療機関向けにしか菌液を提供しておりません。

Can OpenBiome provide material for at-home FMT?

日本でDIY便移植は行われているのか?

既述の潰瘍性大腸炎の患者さんなど、自宅で便移植を行おうとする人は日本でも少なからずいるそうですが、便移植そのものがまだあまりメジャーではない感じがします。

国民健康保険制度のある日本では、海外に比べて自由診療への抵抗感が強く、負担額も大きいためなかなか医療機関で行おうという気にならないようです。

加えて、腸内フローラ移植臨床研究会が発足するまで、国内で便移植を受けられる場所はほぼ皆無でした。

そういえば以前、Twitterで自宅便移植をやっている人がいらっしゃいましたが、いつの間にか情報を見つけられなくなりました。
お元気なんだろうか……
イイね!とかくださってたんで、心配しています。ちひろより。

英語ではあんなに山ほどヒットしたのに、日本語では検索しても全然ヒットしません。
それだけ、アメリカなどでは便移植がメジャーということなんでしょうか。

自宅で安全に便移植をする全ステップ

さて、いよいよ自宅で安全に便移植を行う方法を考えてみます。
繰り返しますが、自宅で便移植を行うことを推奨するものではありません。

むしろ、本当に安全に移植を行おうと思えば、自宅でやるのはかえってコスパが悪いかも知れません。
でもあきらめたくないですよね!!
わたしもあきらめたくないです!
そのあたり、検証していきましょう。

ステップ1:ドナーを探す

まずはドナー探しです。
健康な家族や友人で、便を提供してくれる人を探さないといけません。

Japanbiome®という研究会専属のドナーバンクでは、結構な割合でドナーをお断りするという失礼なことをしていますが、一人で行う場合は理解者を探すのはなかなか難しいかもしれません。

でも大丈夫。
そんなときはわたしがドナーになってあげますので、ウンコを取りに来てください。概ね朝の9:00〜11:00に出ますので。

ステップ2:ドナー検査をする

Japanbiome®でやっているほどの検査は、正直かなりお金もかかるし、効果はなくてもいいからとにかく安全性さえあればいいという場合はもっと減らせると思います。

最低限、上述した感染症と耐性菌に関する便検査はしてください。

感染症・耐性菌検査をこれだけ一気に病院でしてもらえるんかわかりませんが、ドナーの便にこれらの菌がいないか、調べておく必要はあるでしょう。

あと、エイズも腸内細菌に関わっていると言われているので、いちおう感染症系の血液検査もしておいたほうが良いと思います。

検査にひっかかったら、また他の人で検査しないといけません。
ちなみにこの検査は当然ですが保険が効きません(泣)

もし検査をどうしてもしたくないなら、
・今まで加熱された食材しか食べたことない
・外出もあまりしない
・海外旅行経験なし
・セックス経験なし
・薬もほぼ飲んだことない
みたいな人がいれば、感染リスクは下がるかもしれません。

ステップ3:ドナー便を入手する

検査をしてから検査の結果が出るまで、ドナーには自宅にこもって安静にしておいてもらったほうがいいでしょう。
そのあいだにドナーが何かに感染したら大変ですからね!

検査をクリアしたら、早速便をもらいましょう。
輸送中のリスクを減らすため、可能であれば前日から自宅に泊まってもらったほうが良いですね。

ドナーのウンコがいいウンコになるよう、ごちそうを振る舞いましょう。
個人的には、チゲ鍋がおすすめです。
次の日、象のウンコみたいなやつが出ます。

ステップ4:清潔な処理環境をつくる

海外の動画では、お風呂場や洗面所が推奨されています。
これはあくまでも、「飛び散った時に掃除しやすいから」です。

実は、お風呂場や洗面所には細菌がたくさんいます。
菌の味方でいなくてはいけないわたしたちがそのへんの除菌剤CMみたいなことを言って申し訳ないですが、こと便移植に関しては、どうしても歓迎することのできない病原菌たちもいるんです。

お風呂場や洗面所を、隅々まで掃除しまくってください。マジックリンで洗って、除菌シートで拭いて、熱湯消毒して。

大体の菌は、75度で5分も加熱すれば死滅します。
芽胞を形成したウエルシュ菌は100度で4時間以上、一部の黄色ブドウ球菌は200度で30分以上加熱しないと死にませんが、これはもうご家庭では無理なんで、諦めましょう。

事前に空間全体を紫外線殺菌できるとなお良いです。

処理に使うビーカーなどは、ヒビテン消毒しておいてください。Amazonでも売ってます。

消毒済みのものも含めて、使用する器具類は陽圧の安全キャビネットかクリーンベンチに入れておくことが望ましいです。
さらに言えば、部屋全体の空気をヘパフィルターで循環させておくのが理想的です。

でも家にはないので、使う直前まできれいなビニール袋にでも入れておきましょう。

ステップ5:自分も清潔にする

病気でしんどいとは思うんですが、便を処理する自分も清潔にしてください。
全身を洗って、使い捨ての防護服と手術用手袋をはめます。

撮影協力:岡研究員

ステップ6:便を処理する

さあ、早速ドナーの便を処理していきましょう。

便の中には、腸内細菌のほかに小腸から剥がれた壁や、食物残渣が残っていますので、これをできるだけ取り除いていきます。

ちなみに、大学病院などで公開されている菌液の作り方は至ってシンプルです。

  1. まず便と生理食塩水を混ぜて、便を溶かします。
  2. フィルター(滅菌ガーゼなど)で便を何度か濾過します。
  3. できた菌液を、浣腸の要領で腸に入れます。

基本的にはこれだけです。
便の不純物をよりしっかり取り除くために「ホモジナイズ」という工程が入れられることもあります。

海外のDIY便移植でやたらとジューサーが出てくるのはそのためかと思われます。

ただ、一般家庭用のジューサーは高速過ぎて菌を殺してしまう可能性が否めません。
なんなら、医療現場でのホモジナイズでさえ、微生物の大事な遺伝情報の交換の要である繊毛や鞭毛を損なってしまうのではないか、とシンバイオシスは考えています。

ちなみに我が家の私物のスロージューサーを使って、便の濾過ができないか試したことがあるんですが(マジですよ)、
一瞬でフィルター全づまりして3万円のジューサーが死んだ。

しかもそれがトラウマになって、もうスムージー的な形状をした飲み物が飲めなくなったので、普通に長い時間かけて濾過しましょう。

自宅でも環境さえ整えばできなくはない

さて、自宅で便移植をする方法について、限界まで知恵を絞って考えてみました。
みなさんならどうしますか?
安全をお金で買うか、いつか安くなるまで待つか、それとも家でチャレンジしてみるか。

法律的には、菌液はまだ医薬品ではありません。
注腸は医療行為ですが、自分でやるか、双方の合意のもとやるか(=プレイ扱い)であれば、違法ではないそうです。

ちなみに、便を処理するあいだ、家中めちゃくちゃ臭くなります。

あと、1回の便で大量の菌液ができますが、それは病気のあなたには濃すぎるので、もったいないですが全部使わずに捨てましょう。

菌液は感染性廃棄物に該当するので、医療機関での処理が必要だと思いますが、安全の確認されたドナーのものなら、トイレに流してもいいかもしれません。
すみませんが調べてください。

※最後に、自宅での便移植は危険です。お決まりの締めくくりですいませんが、ほんとうに止めてください。

ウンコは汚くないですが、感染の可能性があるという観点からは、取り扱いに注意が必要なことが伝わったら嬉しいです。

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自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。 でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。 いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
腸内フローラ移植(便微生物移植)を知っていますか?
わたしたちの腸に暮らす腸内細菌たちと健康との関連が、世界中で次々に明らかになってきています。 「すべての病気は腸から始まる」と言われるように、腸内環境が崩れると病気を引き起こすことが知られています。
健康な人の腸内フローラを移植することで、ふたたび健康を取り戻そうという治療法に期待が高まっています。
腸内フローラ移植(便移植)とは

当研究所について

一般財団法人腸内フローラ移植臨床研究会

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