腸内フローラ移植菌液はどうやって決める? 検査結果より大事なこと。

ありがたいことに、腸内フローラ移植のお問合せが増えています。
特に増えている腸疾患、アトピー・アレルギー、うつをはじめ、お恥ずかしながら不勉強で聞いたことのない難病をお持ちの方まで、可能性を感じてお問合せしていただいています。
中にはアメリカ人や中国人の方もいらっしゃいます。
そしていざ移植に臨まれるときに、「あれ、フローラバランスの検査結果待たなくていいの?」というお問合せもよくいただきます。
現在、累積の移植実績がかなりの数になり、傾向がわかってきたことから、事前の腸内フローラバランスの検査結果が移植菌液の調整時に影響することはほとんどありません。
ただし、海外で生まれ育った方や、当研究所で経験のない疾患にかかっていらっしゃる場合、検査結果が出るまで1ヶ月ほどお待ちいただくこともあります。
オリジナルフローラバランスというと、検査結果が出て、それに対して菌液を調整していると思われる方が多いのですが(わたしもそう思ってました)、まったく同じフローラバランスでも、移植菌液の調整方針をガラッと変えることはあります。
フローラバランスなど見なくとも、あなたに必要な菌たちは手に取るようにわかるのです。。。(BGM:ミスターマリックのテーマ)
その前にまず、そもそも国内外で行われている「糞便微生物移植」の概念について話しておきましょう。
目次
そもそも「糞便微生物移植」という方法の考え方

国内で臨床治験が行われている糞便微生物移植のドナーは、基本的に二親等以内の健康な人とされています。(一部の大学病院では規制を解除)
海外ではもっと研究が進んでいて、ドナーバンクが存在する国もあり、うんちを売って生活をしている方もおられます。
わたしも「もしも自分がドナーになったら」という設定で遊ぶことがあるんですが、
緊張して朝にうんこ出えへんくなることあるもんな。(すごい想像力)
「うわ、こうやって緊張して、ストレスかかって、ちょっとフローラバランス崩れたらどうしよ!」とか。(ドナー向いてへんのちゃう)
話を戻しますと、現時点では、国内外に共通した考え方として「病気のフローラバランスに健康なバランスを入れたらいいやん」という考え方で行われています。
病気になっているときの腸内フローラバランスが一定の崩れ方をしていることは研究でわかってきているので、どういう崩れ方をしてたとしても、それを普通のバランスに戻したら治るやん、という感じ。
これ、ものすごく正しいんです。
例えば病気の腸内フローラの状態が、「沸騰しているお湯」だったり、「半分凍っている水」だったりするとします。
それに対して、常温の水をたっぷり加えてやると、常温に近い水になってくれるやろうという感じ。
当研究所の方法は、ほんの少し違っています。(所内では、「次世代型腸内フローラ移植」と呼んでいる)
オリジナルフローラバランスの実現に最重要なのは○○

ちょっと考えてみていただきたいのですが、沸騰しているお湯や、半分凍っている水を、常温の水を加えることで常温にしようとすると、やや効率が悪いのです。
それやったら、沸騰しているお湯に氷を入れるか、半分凍っている水に沸騰しているお湯を入れたほうがよいのではないか?
ものすごく乱暴な言い方をしていますが、だいたいこういうイメージで、菌液を調整しています。
そのためには、いろんなパターンのドナーがいてくれたほうがいいんです。
ボランティアドナーになってくれる方は、自分で受けるとウン十万円の検査が、定期的に受けられます。
(2018年9月時点、新規ドナー募集はしておりません)
じゃあ、移植菌液を調整する時にいちばん大事なことは何か?
それは、「医師による問診」なんです。
腸内フローラ移植臨床研究会の問診票はごっつい長いんです(これ、ほんとにごめんなさいね)。
ここに書いていただく情報に加えて、問診やお電話で患者さんのバックグラウンドを、じっくり時間をかけて徹底的にお聞きします。
普段の食生活・睡眠・嗜好をはじめとした生活習慣はもちろん、
ご本人の自覚されている性格、周りからの評価、話し方、考え方
これまでにかかったご病気、日常で感じる違和感、
ご家族構成、ペットの有無、住環境、ご職業、
過去にあった大きなストレスまで、時間の許す限りできるだけ多くその方を取り巻く情報をいただき、構築することで、全体のイメージをつくります。
わたしが、移植とは関係のない幼少期も含めて長々と体験談を書いたのは、そういうわけです。
(腸内フローラ移植体験談)
なのでみなさん、移植をお受けいただくときは、移植前も、移植期間中も、主治医の先生にたくさんお話ししてください。
そして移植中は、ご自身の身体に起こる小さな変化の連続を楽しんでみてください。
「病気が治るか否か」だけに焦点を当てすぎず、
「朝の目覚め」、「食の好みの変化」、「疲れやすさ」、「うんちの状態」など、身体に次々と変化が起こっていくはずです。
そして、移植した腸内細菌を歓迎する生活を続けていただくことも大切です。
検査結果が必要になるタイミング

そんなふうに、移植初期の移植菌液バランスを決定し、患者様の状態に合わせて濃度を調整して移植を行っていきます。
(参考:腸内フローラ移植(便移植)の菌液写真公開! どれくらいの菌がいる?)
そして、1クール終了後、場合によっては1クールの期間中に、移植菌液のバランス微調整が必要になることがあります。
簡単に言うと、元気になっていただくまでの過程を何段階かに分けている場合、「最初の何回かで初期の目的は達成したので、次のターゲットに狙いを定めましょう」と微調整を加えるわけです。
最初の方の移植で「ウェルカムムード」が身体にできているので、多少大胆なこともできたりします。
こんなふうに、「一旦移植を終えて、考察を試みるタイミング」で、結果が重要になってきます。
「このフローラバランスで、この菌液で、この反応やったってことは……」みたいな感じで、症状として現れているものの原因が、例えばホルモンバランスの崩れによるものなのか、初期の腫瘍によるものなのかがわかることさえあります。
加えて、必要に応じて病院での血液検査などの結果も照合する、と。
こういう話を聞いていると、あまりにもすごくて次元が違いすぎて、そっと意識をよそへやることもあります。(集中せい)
ちなみに、うちの菌職人には特技が3つあります。
1つめは、心底くだらないオヤジギャグ。
2つめは、早食いと大食い、そして心底おいしそうに食べる。
最近の健康本で、「外食は白ご飯を残しましょう」とか書いてるけど、バチ当たるでって思う。
3つめ。
患者さんの情報を隠して、フローラバランスだけ見せると、その人の症状と性格を言い当てる。
逆に、患者さんの情報だけ伝えてフローラバランスグラフ作ってもらうと、結果出た時にだいたいあたってる。
これ、さらっと書いてるけど、めちゃくちゃすごいと思いませんか?
今までお話ししてきた、
- 基本的には、健康な腸内フローラをいれるという考え方
- そこに、問診による情報でちょっとプラスして、オリジナル菌液にする
- この3つめの特技
のおかげで、結果を見なくてもその人にピッタリの菌液を調整できているというわけです。
腸内フローラバランスの結果はどうだったんだろう?
と気になる方が大半だと思いますが、申し訳ないんですが今のところ、検査結果はお見せしていません。
腸内フローラバランスの結果がすべてを反映しているわけではないので、同じような結果でも、性格や生活環境の違いで、調整のしかたがガラッと変わります。
それぞれの菌の解説がまだ確定的でないこと、読み解きが難しいこと、検査結果の出し方が他社の特許であることなどがその理由です。
研究目的のために、移植前後の便検査への協力だけ、お願いをしています。
より一般向けにわかりやすく結果を出せる検査もスタートします。
ぜひみなさん、毎年の健康診断に加えてください!
すでにお休みの方も多いでしょうが、明日からのGW楽しんでくださいね(*^^*)
わたしは、引っ越しです。(いろいろあって、この1年でなんと5回目)
しばらくはもう引っ越したくないです。。。
この記事を書いた人

- 研究員・広報(菌作家)
-
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
目に見えないものたちの力を感じる日々です。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
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《特許出願中》
腸内フローラ移植
腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)
“腸内フローラ移植菌液はどうやって決める? 検査結果より大事なこと。”へ2件のコメント
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積極的にお願いしたいです どうぞ宇よろしくお願いいたします!!
コメントありがとうございます!
こうしてブログ記事をお読みいただいて、内容をご理解いただけた上で移植をお受けいただけると、効果がぐっと違ってきます。
心から感謝いたします。