自分の便による腸内フローラ移植で、ダイエット後のリバウンド防止に

ダイエット。
そう、ダイエット。

多くの日本人(特に女性)が一度は挑戦したことのあるものであり、常に関心を持っているトピックでもあるのではないでしょうか。

でも、日本でのダイエットなんてまだまだ可愛らしいもんです。
欧米では、過体重による生活習慣病が本当に深刻になっています。

日本人は美容意識が変なことになりすぎて痩せすぎの人も多いですが、南米の人とか見てみて。
自由奔放な体型で、街中を闊歩されているお姿なんて、マツコ・デラックスの量産かと思うくらいです。
あのくらい自由に生きたい。

話が逸れました。
それが問題になっているんです。

肥満と腸内細菌の関連性が言われるようになってから、肥満は感染症だという説すらあり、もう自分の意思でどうにかできるレベルを超えて社会問題になっています。

腸内フローラ移植で痩せるのか問題

ヤセ菌、デブ菌という言葉が腸内細菌界で流行語大賞になりそうなことからもわかるように、腸内細菌と肥満・スリムさは非常に関連が深いと考えられます。

実際に、その人の持つ腸内細菌の顔ぶれや構成によって、太りにくい体質や特定の食べ物を代謝しやすい体質というのが決まったりします。

わたしの菌はたぶん、スイカをめっちゃ消化できるタイプ。ひと玉すぐになくなるもん。(歯止め聞いてないだけや)

そこでダイエットの近道をしたい人は考えます。
「痩せてる人の便を移植してもらったら、痩せれるんじゃない?」

たしかに、そうなんです。
ごもっともなんです。そういう研究結果も出ていますしね。

ジェフリー・ゴードンさんの肥満マウスと痩せマウスの便入れ替え実験も有名ですからね。[1]An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest | Nature

でも考えてみてほしい。
例えば、腸内フローラ移植のおかげで基礎代謝が改善して10%上がったとしよう。
毎日100kcal以上、勝手に消費されるわけ。夢のようだよね。
30日で3,000kcalになる。

でもね、水分の減少とかを除いて、1kg痩せるのに7,000kcal必要とも言われる世界で、3kg痩せるのにどれくらいかかると思います?

しかも、それほど病的に太っていない場合は、代謝がもともと悪くない可能性があるので、もっと痩せるのには時間がかかるでしょう。

痩せることと、代謝を上げることと、健康な体つきになるということはちょっと別問題として考えたほうが良いのかもしれません。
他人の便を入れる心理的抵抗を頑張って乗り越えたわりに、コスパが悪いということにもなりかねません。

自分の便を使った移植で、ダイエット効果が

さてここで、朗報があります。
実は、病的に太っている場合には、自分の便を移植することで体重減少の効果が見られるという報告がありました。

リバウンドを防いでくれる効果と言ったほうがより正確かもしれません。

ダイエット中は多くの人が頑張れる。
目標に向かって頑張っているときは、気持ちがいいものです。

問題はその後。
ダイエットに成功した人の大半が、リバウンドしてしまいます。
しかもダイエットで食事制限をしていた場合は、リバウンドでもとに戻るわ、より太りやすい体になってるわで踏んだり蹴ったり。

Effects of Diet-Modulated Autologous Fecal Microbiota Transplantation on Weight Regain – Gastroenterology

方法

今回の実験の方法は、90人の過体重な男女に3つのダイエット法を割り振って行われました。

  1. 健康的な食事ダイエット法
  2. 地中海式ダイエット法
    …くるみを1日28g食べる
  3. “グリーン”地中海式ダイエット法
    …くるみを1日28g食べる、ミジンコウキクサのグリーンスムージーを飲む

すべてのグループはジムの無料会員権が与えられ、運動のガイドラインも与えられています。

選べるとしたらどれがいい?
これイスラエル人なんですが、わたしは日本人なんで、1を選んで「薄味和食」とかにしよかな。
いま妊娠中なんですが、体重管理が思ったより大変。運動してもすぐ疲れる。のに、腹が減る。

平均年齢52歳の彼らが6ヶ月間、このダイエットに取り組みます。
なんとみんな、平均して8.3キロの減量に成功!

頑張ったね(泣)(褒)

そしてこの実験には、リバウンド期間も含まれています。
最初のダイエット6ヶ月間の直後の自分の便を提供して、それを6ヶ月後から14ヶ月後の間飲むというわけです。

自分の便やし、無臭加工もされているので、心理的抵抗も少なかったかと思われます。
今の技術ってすごいですね。
経口投与による胃酸での菌の死滅などの記載はありませんでした。

結果

3つのグループそれぞれにプラセボを設けて観察した結果、以下のような結果になりました。

自家便移植でリバウンド防止になったのか?

  • 一般的な食事改善、地中海式ダイエットでは有意差なし
  • “グリーン”地中海式ダイエットでは、自家便移植17.1%の体重リバウンドに対してプラセボが50%のリバウンドと、著しい効果
  • 同じく”グリーン”地中海式ダイエットでは、ウエストの数値とインスリンのリバウンドにも効果

なぜこのような結果になったかというと、腸内細菌が深く関わっていそうです。

自分の便を移植して結果が出ているということは、ダイエットをした6ヶ月間が経過したあとの自分の腸内細菌の顔ぶれが変わっている必要があります。
被験者自身の腸内フローラを著しく変化させたのが、この”グリーン”地中海式ダイエットだったというわけです。

そういえば、ミジンコサプリってなんか流行ってた気がする。ミドリムシやったっけ?

繰り返しになりますが、あくまでイスラエル人を被験者とした結果なのであしからず。

代謝の向上、抗炎症作用にも明確な変化が

さて、この実験には後日談があります。

上述の実験だけでは、”グリーン”地中海式ダイエットの効果のみが浮き彫りになっていますが、実はどのダイエット法であっても自家便移植をすることで代謝の維持に役立っていたことがわかりました。

Autologous fecal microbiota transplantation can retain the metabolic achievements of dietary interventions – ScienceDirect

この報告では、3つのすべてのグループまとめて、プラセボよりも自家便移植において代謝維持の数値が良好です。

  • レプチン(脂肪細胞から分泌される物質)の減少
  • CRP(炎症マーカー)の数値減少
  • インターロイキン6(炎症マーカー)数値の減少
  • 総コレステロールの減少

炎症マーカーがダイエットとどう関係しているの? と思われるかもしれません。
実は、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病においては、まず体内組織で炎症が起こっていることがすでに様々な研究で明らかになっています。

食生活の改善で腸内フローラは変わる

この実験のすごいところは、食生活の改善で腸内フローラが変わることを示したところではないかと思います。

プロバイオティクスを摂取したり、プレバイオティクスを摂取したり、腸活という名で腸内フローラの改善を図っている方は年々増えてきています。

でも、どういうわけか「食生活では腸内フローラは改善しない」という認識が広がりつつあります。
それってこう言いかえられるのではないでしょうか。

「食生活だけでは、腸内フローラの変化を維持することができない」

今回、食生活の改善を頑張った半年の間に変わった自分の腸内細菌たちをカプセル化して、ダイエット終了後も引き続き服用することで、代謝の維持や抗炎症作用が認められました。

これは、自家便移植によって「頑張った期間の腸内フローラを再現できている」と言ってもいいのではないでしょうか。

過体重は、本人の意思の弱さだけではありません。
腸内細菌の構成、食品に含まれる抗生物質、処方される抗生物質、様々な肥満因子が指摘されています。

飢餓と肥満。
正反対に見えるこれらの問題を、腸内細菌が橋渡ししてくれるかもしれません。

この記事を書いた人

ちひろ
ちひろ研究員(菌作家)
自分の目で見えて、自分の手で触れられるものしか信じてきませんでした。
でも、目には見えないほど小さな微生物たちがこの世界には存在していて、彼らがわたしたちの毎日を守ってくれているのだと知りました。
いくつになっても世界は謎で満ちていて、ふたを開けると次は何が出てくるんだろう、とわくわくしながら暮らしています。
個人ブログ→千のえんぴつ
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腸内フローラ移植

腸内フローラを整える有効な方法として「腸内フローラ移植(便移植、FMT)」が注目されています。
シンバイオシス研究所では、独自の移植菌液を開発し、移植の奏効率を高めることを目指しています。(特許出願中)